#161 ページ19
溜息をついてから一拍置き、浅野くんはゆっくりと口を開く。
現状を教えてくれるらしいが、彼の様子から察するにあまり良い状況ではなさそうだ。
「会長が今まで人に仕事を押し付けてきた証言は十分取れている。
それに、学校の運営予算を誤魔化している話も出ている。
……が、如何せん状況証拠ではな。
決定づけるものさえあれば早いんだが」
犯罪ではないか、と言いかけてから終始溜息混じりのそれに、はたと気づく。
「運営予算の誤魔化し……パソコンにデータって残ってるかしら」
「リスクはあるが、後から確認出来るように隠して残すだろうな」
言い切った彼に、私でもそうすると頷く。
何がきっかけで矛盾が生じ、墓穴を掘るかわからない。
「データがあったところで、問題はそれを容認している大人がトップにいるという事実だ」
忌々しいと呟く浅野くん。
彼ならば、もう少しの時間さえあれば諸々解決出来る策を用意するだろう。
しかし、私には今この手に力技で解決出来る手段が存在する事が確定した訳で……。
「じゃあ、浅野くん。
こんな面倒な事はさっさと終わらせてしまいましょうか」
ぽんと手を叩いて自身の気持ちを切り替えて立ち上がる。
そんな私を暫く見つめてから、漸くその意味を理解したのか眉根を寄せる浅野くん。
「証拠が揃っていないと言っただろう」
「揃えればいいの、そんなもの。
今が一番いい時期だって事、わかってるでしょう?」
「あと一週間は必要だ」
「一週間あったら体育祭終わるじゃない。
貴方、テスト期間中後始末に追われるつもり?」
冗談でしょ、と態とらしく口許に手をあてる。
一層表情を歪めた彼に流石にやり過ぎたと密かに反省し、1つ咳払い。
「あてがあるの。
それに最近、少し興味深い話を聞いたから……流行りの糾弾イベントといこうじゃないの」
得意気に口角を上げる私に、浅野くんはもう諦めた、と言わんばかりの溜息をついた。
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緋景(プロフ) - いつも楽しく見させていただいてます。続きが気になる素敵な作品です。お忙しいかとは思いますが、更新たのしみにしております! (2024年9月19日 21時) (
レス) @page12 id: 2441f77948 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:聖泉りか | 作成日時:2024年7月24日 0時


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