スキになったら負け！2【Hirano.S】 (ページ24)

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episode69 ページ24

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紫耀くんからのメッセージをみて、

ビルの3階にあった満喫から階段を降りると
歩道に幅寄せしてハザードを焚いている見慣れた車が見えた。

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いつも私たちが暮らす街と比べれば
ずっとこじんまりした街だけど

その分こんな時間にもなれば人通りがまばらで寂しく感じる。

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車に近づくと
運転席の窓に浮かんで見えた紫耀くんが
小さくこっちに手を振ってくれて

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「こんな時間にごめんね、ありがとう」

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助手席に乗り込んだら

「んーん、おまたせ」

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当たり前のようにブランケットを手渡される。

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「今日お仕事早く終わってたんだっけ？明日は？はやいの？」

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日付もとうに変わったこんな時間に
こんなところまで来させてしまったのが申し訳なくて聞いたら、

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「大丈夫だよ。そんなことより結婚式、どうだった？」

私の気遣いに気付いている紫耀くんが話を変える。

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「あ、うんっ。すごかった！やっぱりウェディングドレスってあこがれるよねぇ〜！！」

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純粋に、
高校生の時一緒にばかなことをしてた友達が
純白のドレスに身を包み、真っ白なチャペルに旦那さんと肩を並べた時

息を呑むくらい綺麗で…

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それを見た自分の感想を、
なんてことなく口にしてしまったのだけど

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その後の紫耀くんの表情が一瞬だけ曇ったのに気付いてしまって…

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なんとか取り繕いたいのに
うまく言えずにかえって彼を責めても悪いと思うと

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「…」

「…」

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2人とも黙ってしまう。

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しばらく沈黙のまま、
車だけは順調に家に向かって進んでいて

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何個目かの赤信号に足止めされた時、

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「…俺、絶対にAさんにウェディングドレス着せてあげるからね」

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紫耀くんが
ハンドルに寄りかかったまま
ぽつりと呟いたから

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「…それはもちろん紫耀くんのとなりで、だよね？」

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その横顔にいじわるに聞き返せば

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「当たり前」

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朝アイロンでしっかりカールさせたはずの
へたった前髪をくしゃくしゃされた。

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照れてこっちを見てくれないのはわかってたけど

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そう言ってくれたのが嬉しかったから

「えいっ」

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「わっ！！！…あっぶな！」

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どんな顔してるのか、

見たくなって

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「ちょっと眩しいから返してー」

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「こんな夜中だよ？眩しくなんてないじゃん！」

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サングラスをひょいっと取り上げたら

その下の優しい目がゆるく弧を描いていた。