スキになったら負け！【Hirano.S】 (ページ49)

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episode46 ページ49

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「…もし、もしっ」

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緊張し過ぎて上ずる声

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「あ、突然ごめんなさい。紫耀です。」

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電話の向こうの彼の声は落ち着いていて

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「お仕事中でした？今大丈夫です？」

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相変わらず気遣い屋さんだ。

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「仕事はとっくに終わってます。…大丈夫ですよ。」

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変に意識してしまって
こないだどうやって彼と話したのか忘れてしまった。

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「Aさんって電話苦手ですか？」

「え？」

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彼は気遣いができるだけあって
よく気づく人みたいで

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電話越しでも私の様子がおかしいことに感づいたみたいだ。

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「なんかこないだとちゃうから。」

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「そっ、そんなことないよ…」

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取り繕うように口調を崩して見るけど

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「…もしかして、俺のこと知った？」

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私がどうしてうまく喋れなくなってしまったのか

彼にばれてしまったらしく…

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「…うん。ごめんね、普段そこまでテレビ見ないし…。今日のお昼のテレビ見て、驚いたよ」

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正直に話すと電話の向こうが静かになった。

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「あっ…とその、」

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沈黙が気まずくて何か話そうとしても

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「えーと、、」

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上手い言葉が出てこなくて…

もじもじしてたら
向こうから「はぁ…」とため息がひとつ、聞こえて

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「俺のこと知ったら、Aさんは俺のこと嫌いになった？」

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彼が言う。

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嫌いって、
そんなわけない。

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まだ「好き」とも言えないけど、
「知りたい」とは思った。

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「そんなわけないよ。これから仲良くなれたら嬉しいなって思って連絡も待ってた。…でもほら、よくわからないけど紫耀くんたちの世界って交友関係もシビアでしょ？私なんかと会ってたらだめだよ」

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まだ私たちの関係はほぼないようなものだけど、

でも異性との交友関係って

他人の捉え方でいくらでも捻れるし、拗れる。

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私の存在が“これから“の彼の未来を壊したくない。

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そう思ってやっとの思いで本音を伝えたのだけど…

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「会ってたらだめかどうかなんて、俺が決める。今俺が会いたいと思ったのはAさんなんだよ。…でもAさんが考えてくれてることもわかる。だからチョコ屋さんは諦める。そのかわりどっか人の少ないとこで、会いたい。」

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私の決心は
彼の言葉で簡単に揺らいでしまいそう。