スキになったら負け！【Hirano.S】 (ページ17)

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episode17 ページ17

オフの間になんとか体調を戻した紫耀くんは
またハードな毎日に帰っていった。

そのころ私の仕事も繁忙期になって
休日出勤も増えて

同じ家から出て
同じ家に帰るのに

まともに紫耀くんの顔を見れない日々が続いた。

生身の紫耀くんに会えない分、
テレビの向こうの彼に会える回数は増えて

それは本来嬉しいはずなのに
ちょっぴり寂しく思ってる自分がいて

涙が浮かびそうになるのを隠すために
そそくさとベッドに潜り込んだ。

一人で眠るには
ダブルベッドは広すぎて

普段は紫耀くんが眠る壁側に横になる。

そしたら、
なんだか紫耀くんのにおいがするような気がして

ホッとして

あっという間に眠りに落ちていた。

・

・

・

明け方、目が覚めたら

「……えっ」

私はがっちりと後ろからホールドされていて

窮屈な腕の中、なんとか寝返りをうって振り返ると

「ん…Aさん？」

そこには紫耀くんのねぼけた顔があって

「…しょーくん」

あまりに久しぶりすぎる温もりに
心がキューっとして

「……なんか、久しぶりにAさんに会えた」

「ほんとだよ。紫耀くん全然いないんだもん」

私の顔見て嬉しそうにしてくれた紫耀くんに
そんなこと言ってしまって

「…ごめんね？あんまり一緒にいれなくて…」

嬉しそうな顔は
一瞬で悲しい顔に変わる。

……こんな顔させたい訳じゃないのに

寂しさは隠せなくて

「…ごめんね、紫耀くんだって頑張ってるのに」

彼の頰にそっと両手を添えると

「ううん。…でもね、俺だって寂しいんだからね？」

Aさんばっかり寂しいみたいな顔してーって笑う。

「明日は？仕事？」

「ううん。明日はお休み。紫耀くんは何時から？」

「俺も明日は久しぶりにちょっと遅いかな。お昼前には出ちゃうけど、」

紫耀くんは自分の顔に添えられる私の手をゆっくりとると、

「…あっ、と、紫耀くん？」

そのまま、私に覆い被さるように
体の向きを変えて

「Aさん不足なの。……だめ？」

さっきまでとは違う
男の顔して私を見てる。

「だっ……だめじゃないけど…」

ベッドサイドの時計は明け方の4:30を過ぎたところだし、

何しろ紫耀くん疲れてるだろうし

そんなこと考えて戸惑っていたら、

私のそんな考えなんて全て見透かしたように

「疲れてるからこそ癒してよ」

薄暗い中で彼の瞳がまっすぐ私を見てる…