スノ担、マネになる。 (ページ28)

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♯28 「御祈りお手紙」ページ28

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『雪襠side』

結局本番まで、通し稽古を見ることはできなかった

本番に近づくにつれて

マネージャーの仕事は忙しくなっていった

初日を迎えた今日。

メンバーのみんなを送り届け

控室に向かうと

町田「雪襠、本番見ていいよ。

　本番始まっちゃったらやることないしね。

　一回くらいは生で見とかないと。」

入るなり町田さんが嬉しそうに言った

雪襠「え！いいんですか？！」

町田「見たかったんでしょ？

　客席じゃないけど、調光室から見ていいって。

　スタッフさんの邪魔にならないようにね。」

雪襠「はい！！ありがとうございます！！」

初めて、生で本番を観られる！

それだけでワクワクした。

雪襠「あ、そうだ！

　今日のお祈りまだでした、行ってきます！」

町田「まだ怪我治ってないんだから安静にな！！」

雪襠「はーい！！」

お祈りというのは、劇場の関係者入り口にある

公演成功を祈願するお札が置いてある台座のことで、

滝沢さんがいつも一礼して入るのを見て

わたしも一礼して、毎日手を合わせるようにしてる

やり方が合ってるかは別として

少しでも、なにか、この公演にとって

プラスになったらいいと思ったから。

静かに手を合わせて、

目を閉じて

いつものように祈る。

「公演が成功しますように」でも

「お客さんが沢山来ますように」でも

「解散しませんように」でもなくて

雪襠「みんなが、怪我なく、悔いなく、

　最後まで走り切れますように。」

いつもは自分の中で留めておく言葉を

声に出して言ってみる。

岩本「馬鹿なの？」

後ろからの声に、つい体が大きく跳ねてしまう

雪襠「岩本さん、」

岩本「それ、お祈りとかするやつじゃない」

雪襠「わっ、、わかってます、、」

指摘されて、なんだか恥ずかしくなってしまった

岩本「それに、あんたがお祈りなんかしなくても

　俺らはいつも通りやるだけだから。」

いつものように冷静で、冷たい岩本さん

雪襠「そうですよね、、」

そりゃそうだ、、わたしにできることなんて

このくらいなんだから。

稽古期間を通して、それは痛いほどわかった。

岩本「見るんだろ、今日の本番」

雪襠「あ、、はい。」

岩本「あっそ、。」

そう言いながら、うんうんと頷いて

岩本「ちゃんと見とけよ。

　自分の担当グループなんだから。」

そう言って楽屋に戻っていった。

雪襠「え、、」