【歌い手】恋する彼女 vol.11【完】

▽すたんちゃんに恋する彼女 ページ7

〈 一香様 から リクエスト 〉

つんつん。何やらスマホを触っている暇そうなすたんちゃんの二の腕辺りを続いても無反応。


「ねぇー…」
「…………」


む。無視ですか？今日はお休みなんだなら少しくらい彼女さんに優しくしたってバチは当たりませんよー？なんて思いながらもう一度だけ、つんつん。


「もー、なに」
「少しだけ、遊ぼ？」
「…………」


あー、また無視したー。
そんなに意地悪するんだったらこっちだって考えがあるんだからな。ソファーに上手に座るペンギンの人形の手をペチペチと動かして叩いてみても無反応。

くそ、おまえがリアクション芸人だったら速攻クビだかんな！！


「構ってくれないのー？」
「……今忙しいの」
「……」
「もうちょっと待って」


そう言ってるけどもう3回目です。すたんちゃん。
流石にお預けは懲り懲りなんですけどー。なんて、咳払いを一つしていつもより高い裏声でペンギンに声を当てる。


「構ってくれなきゃ、ペンギンになっちゃうぞ」
「…………」


あ。そんな酷いことするんだ。……ならいいもん。
ペンギンのぬいぐるみをすたんちゃんの隣に座らせて、彼女の私はソファーの後ろに隠れる。


「……」


ようやく静かになった部屋が気になったのかキョロキョロと辺りを見渡すすたんちゃん。ふふっ、困ってる困ってる。


「おーい、A？」
「……」
「ま、…まさか、ホントにペンギンに……！？」


ぬいぐるみを持ち上げて真剣な声色で言うすたんちゃんが面白くってもう少し付き合ってもらおうと先程の声で話す。


「すたんちゃんが、構ってくれないからペンギンになったぺん」


……ペンギンが実際に話すことはないが、まあ語尾に『ペん』か『ぎん』って言っときゃなんとかなるだろ。

適当な思考回路に今度はどう来るかワクワクしていれば少し悲しい声で話しかける。


「……そっか。残念だな、ぬいぐるみになったAとはキスも、デートもいけないな…？」


……！！「戻ってくれないかな…」と呟く彼の言葉に身を乗り出して、ぬいぐるみを奪って言い放つ。


「戻ってきました…！」


くすくす笑う彼に全てお見通しでも、遊んでくれるならそれでいいのだ。




凄くほのぼのしてしまった──…！
本来ならもっと欲と言う欲を見せつけようとしていたのに、可愛いだけのやり取りになってしまった。
え、このカップル可愛いな。

ペンギンは私の好み。

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