別れ2 ページ8
(side Marco)
息をしている。鼓動が聞こえる。今腕の中にいるAを頭と体に刻み込んた。小さく震える体が愛しくて、どうにも気が振れちまいそうになる。
マ｢幸せだなんて、やめてくれ…お前にはもっと、静かで、穏やかで、海の上なんかよりずっと広い世界が、幸せがあるはずだよい｣
このままさらってしまえばいっそ楽だろうか、空に攫って、高く飛んで、遠い場所で一緒に落ちてしまいたい。
幸せになって欲しいと思うのと同時に、自分の見えない場所で、誰とも知れない男と幸せになるAを素直に受け入れる器量も無い事に今更気づく。
この手を離した先にあるAの幸せを願ったくせに。
『…それでも、本当に幸せでした。だから、そんな顔、しないでください』
白くて小さい手が頬に触れて、優しく持ち上げられる。情けなく歪んだを細い指が滑って撫でていく。最後まで、まるで疲れて帰ってきた人間を癒すみてぇに優しく微笑んだA。
『マルコ隊長の不味いお酒、いつか見つけた時にはお手紙、書いてもいいですか？』
Aの最後のワガママだろうか。その声が甘えるようで、情けなく萎んでいた心が立ち上がる。
マ｢待ってるよい｣
これも俺のワガママだ。やはり自分はずるい人間だ。
ようやく小さな肩から手が離れた。もう震えてなどいなかったその体が少し引かれて、とびきりの笑顔をうかべられる。
『お世話になりました…ご武運を』
最後まで海賊として見送る彼女が深く刻まれた。
海の匂いがするその島に、2人を置いて、海賊船モビー・ディック号は錨を上げた。帆に風を大きく受けて2人が手を振る港から遠ざかる。すぐに小さく見えなくなった2人を多くのクルーが見守った。
その日の夜はいつも通り、それぞれが思い思いの時間を過ごした。
一昨日まで、彼女が忙しなくも楽しそうに働いていたその場所を通り過ぎた時、小さく灯りが点いているのが見えて慌てて扉を開いた。幻でも見ているのかと目を擦って見た先では、主を失って静まったバーカウンターを掃除するサッチが立っていた。
サ｢うおっ！なんだよ…脅かすなってんだ｣
マ｢何してんだよい｣
サ｢見りゃ分かるだろ。ここはまた倉庫になる予定だ｣
苛立ち混じりにどんどん片付けていくサッチ。後任を立てる話は決裂したらしい。ここはサッチのテリトリーの隣。嫌でも目に入るそこはいつまでも俺たちを縛るだけだ。ここが倉庫となれば、Aの亡霊は消えてくれるだろうか。
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がまお(プロフ) - ちルチルさん» ありがとうございます！！過去編もうちょっとだけ続くと思われます！これからもどうぞお付き合い頂ければ嬉しいです！！ (2019年5月13日 23時) (
レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
ちルチル - ついに過去編来ましたか！過去の夢主ちゃん可愛いですね〜(´ω`)これからも応援してますからどうぞ更新頑張って下さい！ (2019年5月13日 15時) (レス) id: d78596acdf (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - 焔さん» わあ！ありがとうございます！とっても嬉しいお言葉…！感無量です！ファンだなんておこがましすぎますが頑張らせていただきます！これからもどうぞお付き合いください！ (2019年4月19日 22時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
焔(プロフ) - がまお様 Twitterの通知からこちらに来させて頂きました。とてもお話が面白く読みやすく没頭してしまい一気に読ませていただきました。ファンになりました、応援さてください！続きも楽しみにしております。 (2019年4月19日 2時) (レス) id: 05617d7299 (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - シャノワールさん» ありきたり展開で申し訳無いです…（;∀;）少しでも面白いと思って頂けるように頑張ります！！これからもどうぞ暖かい目で見ていただければと思います！ (2019年3月29日 1時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：がまお | 作成日時：2019年3月15日 15時
