気に食わない2 ページ46
(side Marco)
次の朝から、Aは人間丸ごと変わっちまったんじゃねえかと思う程に人当たりが良くなった。
身だしなみは整える、長くて鬱陶しい髪はひとつに束ねる、シャツのシワは伸ばす、シャンと背筋を伸ばして歩くし、飯もしっかりと食う。下っ端の手伝いを率先して派手にバケツをぶちまけたりと何から何まで精力的で生き生きとしていた。
何よりも笑顔が格段に増えた事でAの株は急上昇。元々悪い目鼻立ちはしていなかったが、基本的に男だらけの船内にナースでもない女が1人いるだけで華やぐというもの。鼻の下を伸ばすクルーに目を光らせるのは親心だ。
それにしたってこの変わり様。昨日の親父の言葉が引き金となっているに違いない。甲板で洗濯物を干すAを見かけて堪らず声をかけた。
マ｢おい、A、お前…｣
真っ白なシーツを手にAが振り返ると、長く束ねた髪が風にのってふわりと揺れた。振り返った彼女の姿に思わず息を呑む。
『あ、えっと…マルコ、隊長、どうされました？』
言いなれない『隊長』の言葉と敬語に舌を噛みそうなA。
マ｢お前、どうしたんだよい、昨日までとは別人じゃねえか｣
また詰まらない考えで気丈に振舞ってみせているのか、それとも俺たちに媚びようなんて思っているんじゃないかと想像ばかりが膨らんで、大盤振る舞いなその笑顔が益々、
マ｢気に食わねえ…何の真似だよい｣
薄い肩を掴むと浮かべていた笑顔が歪んだ。ほら、そうじゃねえか、海賊にも男にも慣れてねえくせになんの意地を張っているのか知れないが実につまらない。
『…私、決めたんです』
マ｢あ？｣
肩の震えは感じられない。笑顔を歪めて少し俯いていたAは顔を上げる。それは何かを振り切ったように爽やかな表情だった。
『私は、虫なんかじゃないんです！それをこの船で証明してみせます！』
はっきりとそう一言告げた彼女はまた背を向けて洗濯物干しを再開する。女で、こんなに背も小さくて、捕虜だった彼女を救ったのは俺だと心のどこかで優越感を感じていたのは否めない。それにしたって、彼女がこれほどに清々しい人間だとは気づけなかった。
小さな体では端の方がどうにも上手く干せないようで、必死に手を伸ばす先を掴んでシーツのシワを伸ばす。すると朝から振りまかれる笑顔が向けられた。どうにも眩しいその顔はやっぱり気に食わなくて、綺麗に纏められた髪をぐしゃぐしゃに撫でて足早にその場を去った。
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がまお(プロフ) - ちルチルさん» ありがとうございます！！過去編もうちょっとだけ続くと思われます！これからもどうぞお付き合い頂ければ嬉しいです！！ (2019年5月13日 23時) (
レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
ちルチル - ついに過去編来ましたか！過去の夢主ちゃん可愛いですね〜(´ω`)これからも応援してますからどうぞ更新頑張って下さい！ (2019年5月13日 15時) (レス) id: d78596acdf (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - 焔さん» わあ！ありがとうございます！とっても嬉しいお言葉…！感無量です！ファンだなんておこがましすぎますが頑張らせていただきます！これからもどうぞお付き合いください！ (2019年4月19日 22時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
焔(プロフ) - がまお様 Twitterの通知からこちらに来させて頂きました。とてもお話が面白く読みやすく没頭してしまい一気に読ませていただきました。ファンになりました、応援さてください！続きも楽しみにしております。 (2019年4月19日 2時) (レス) id: 05617d7299 (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - シャノワールさん» ありきたり展開で申し訳無いです…（;∀;）少しでも面白いと思って頂けるように頑張ります！！これからもどうぞ暖かい目で見ていただければと思います！ (2019年3月29日 1時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：がまお | 作成日時：2019年3月15日 15時
