気に食わない ページ45
(side Marco)
自分の息子が今にも死んでしまいそうな子猫を拾って帰ってくる、なんてありふれた体験をしたであろう親父は、スケールの違いはあれどその判断を立派なオッサンになりつつある俺達に委ねた。
要は目の前の彼女を生かすも殺すも、このままこの船でタダ働きさせるのも地上に下ろして知らない誰かと幸せに暮らすのも、俺達次第って訳だ。
当の本人は酔い潰れて先程からよく分からない小言を眠たまなこでブツブツと呟いている。
『そんなにわたし、価値が無いかなあ、ねえ、どう思います？！』
目の前のサッチの襟首を掴んでガクガクと揺さぶる彼女に先程までの絶望感は不思議と無かった。
今まで彼女に感じていた、放っておけないという言葉でしか形容できない感情は奇しくも親父の雑に言い残した一言で名づけられた。それは瀕死の子猫を拾い上げる、命の重みへの責任だった。
親父の一息で身を崩した彼女の命も、俺やサッチからすれば幾分か重たいもので、邪魔な考えを取り除けば、皮と骨だけだった彼女がここまで健康的な見た目になったのにはただただ嬉しさだけが残るだろう。それが愛着だ。
マ｢…なあ、お前、本当にこの船に乗りたいのかよい。故郷は、家族は。詳しく聞かせろよい｣
そもそもこの女が望んだ結果がこれなら仕方あるまい。今残された話題といえば目の前の彼女がどんな人生を歩んで来たのか、それぐらいなもんだ。
『…実家は酒屋だった、って話はしましたよね…私の故郷は海賊に焼かれました』
酒のせいか幾分か軽く開かれた口だったが、僅かに震える手がそれが決して軽くない事を簡単に想像させる。
家を焼かれた彼女はその後孤児として街を点々とし、場末のバーで働いていたところをまたもや海賊に攫われて捕虜となったのだという。なんとも、この時代、人攫いなんて珍しいもんじゃねえが、それにしたって運の悪い女だ。
それと同時に浮かぶ疑問は、どうしてこうも平気そうに海賊船に乗り、俺達海賊と酒を飲み交わしていられるのか。聞き分けが良いにしたって限度がある。
眠りこけてしまいそうな彼女を無理やり起こして問いかける。
マル｢お前、何で平気なフリしてやがるんだよい。気に食わねえ｣
掴んだ肩に力がこもる。俺は自分の身を省みずに死んでいく仲間が大嫌いだ。
『だって…』
こうするしかないじゃない、そう一言呟いて、彼女は空いた酒瓶と共に眠の世界へ沈んで言った。
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がまお(プロフ) - ちルチルさん» ありがとうございます！！過去編もうちょっとだけ続くと思われます！これからもどうぞお付き合い頂ければ嬉しいです！！ (2019年5月13日 23時) (
レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
ちルチル - ついに過去編来ましたか！過去の夢主ちゃん可愛いですね〜(´ω`)これからも応援してますからどうぞ更新頑張って下さい！ (2019年5月13日 15時) (レス) id: d78596acdf (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - 焔さん» わあ！ありがとうございます！とっても嬉しいお言葉…！感無量です！ファンだなんておこがましすぎますが頑張らせていただきます！これからもどうぞお付き合いください！ (2019年4月19日 22時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
焔(プロフ) - がまお様 Twitterの通知からこちらに来させて頂きました。とてもお話が面白く読みやすく没頭してしまい一気に読ませていただきました。ファンになりました、応援さてください！続きも楽しみにしております。 (2019年4月19日 2時) (レス) id: 05617d7299 (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - シャノワールさん» ありきたり展開で申し訳無いです…（;∀;）少しでも面白いと思って頂けるように頑張ります！！これからもどうぞ暖かい目で見ていただければと思います！ (2019年3月29日 1時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：がまお | 作成日時：2019年3月15日 15時
