陶酔 ページ23
(side You)
『こ、これ…』
シ｢ん？ああ、そうか…ここはお前の為に作ったんだ｣
カラリと笑いシャンクスさんはカウンターの前に並ぶ椅子へと腰掛けた。｢入ってみろ｣とカウンター内に手招きされ、吸い込まれるようにそこへと踏み入る。
特に線引きの見えない空間でも、一足踏み入れるだけで体中を駆け巡る血の温度が上がるのを感じた。凝り固まっていたものを暖かく早い血がさらっていく。自分の中に生きる何かが必死に呼吸を取り戻そうとしているのがわかる。
カウンターの向こうでは満足そうにシャンクスさんが笑っていた。冷たいカウンターテーブルに指を滑らせると、まだ使われていないのがわかる。スルスルと滑って指先がシェイカーに当たる。
触れたくて堪らなくなったそれをそっと手に迎える。ひんやりと冷えていたそれがじんわり手に馴染んできた。
シ｢…何か作ってくれるか？｣
肘をつき頭を支えたシャンクスさんが目元を緩ませオーダーしてきた。こんな無茶な注文は普通なら誰も戸惑ってしまうのだろうが、その時の私は頷いて迷いなくグラスへと手を伸ばしていた。
取り出すのは底の深いワイングラス。棚を見ればまだ揃っていないのかいくつかの蒸留酒とリキュール。冷蔵庫にはシャンパンが1本寂しく置かれていた。
グラスに添わせてカシスリキュールをゆっくり注ぐ。重たいそれはもったりとグラスの縁を降りていった。次に静かに栓を抜いたシャンパンをまたゆっくり、泡が逃げないように注げば底で赤黒く溜まっていたカシスリキュールか淡く色づいていく。
泡が逃げないように慎重に攪拌すれば、それを彼の前に差し出す。
シ｢ほお…手馴れたもんだ。流石だな｣
一覧の流れを見ていたシャンクスさんが口元を緩めて受け取る。グラスの足を摘んでクイっと一口煽った。
シ｢うん、美味い…こんなに洒落た酒は久しぶりだ｣
グラスを掲げて灯りに透かす。鈍かった赤が彼の鼻先を照らした。
彼によく似合うそのカクテル。
シ｢俺はあんまり詳しくは無いぞ？｣
バーで酒を飲むには自ずとストーリーが付いてくるものだ。彼はクルクルと回される水面を眺めながら意味ありげにふっと微笑んだ。
『作っておいてなんですが…とってもお似合いです』
淡くも赤黒い輝きが薄い肌に良く似合う。
カシスリキュールとシャンパンの瓶をカウンターに置くとボトルを持つ手が暖かく包まれた。
シ｢…やはりお前が欲しい。記憶なんか戻してくれるなよ｣
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がまお(プロフ) - ちルチルさん» ありがとうございます！！過去編もうちょっとだけ続くと思われます！これからもどうぞお付き合い頂ければ嬉しいです！！ (2019年5月13日 23時) (
レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
ちルチル - ついに過去編来ましたか！過去の夢主ちゃん可愛いですね〜(´ω`)これからも応援してますからどうぞ更新頑張って下さい！ (2019年5月13日 15時) (レス) id: d78596acdf (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - 焔さん» わあ！ありがとうございます！とっても嬉しいお言葉…！感無量です！ファンだなんておこがましすぎますが頑張らせていただきます！これからもどうぞお付き合いください！ (2019年4月19日 22時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
焔(プロフ) - がまお様 Twitterの通知からこちらに来させて頂きました。とてもお話が面白く読みやすく没頭してしまい一気に読ませていただきました。ファンになりました、応援さてください！続きも楽しみにしております。 (2019年4月19日 2時) (レス) id: 05617d7299 (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - シャノワールさん» ありきたり展開で申し訳無いです…（;∀;）少しでも面白いと思って頂けるように頑張ります！！これからもどうぞ暖かい目で見ていただければと思います！ (2019年3月29日 1時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：がまお | 作成日時：2019年3月15日 15時
