あ、黄金じゃない方のマンネです ３

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Side MG

言われるがまま車を停めて荷物を運び終わった頃にはぴったり10時で、Aの方はもうメイクも済ませて車椅子に乗っていた。

設定では、Aは実業家家族の次男で、生まれつき足が不自由。跡を継ぐのは当然長男ということになるのだが、長男には実業家以外の夢があった。

一方次男は後を継ぐ素養は十分あるが、体の自由が効かないのに加えて実の子供ではないのではないか、という疑いもある、という役だ。

複雑な心理表現が求められる役で、実はAの他に数人、流行りの俳優にオファーを出したのだが、その役回りを見て断られることも多かったそうだ。


キャストはそこそこ有名な俳優ばかりで、今までのWebドラマなんかと比べると演技のレベルも高い。
まあ、だからこそ俺はAにやらせたかったんだが。


撮影が始まると、さすがにスンヒョンも集中し始める。初めはスンヒョン演じるウヌが、A演じるシウの車椅子を押しながら話すシーンだ。
そもそもここにロケ地を決めたのは、古い洋風の建物で撮影するためだ。そのために実業家家族でのシーンは全てここに予定され、ここが終われば後は細々した撮影を残すのみになっている。




「............シウ、お前、ここを出たいって思ったこと、ないの？」
「ないよ。そもそも一人じゃ階段も降りられないんだ、ここを出てもやれることなんてない」

「じゃあ、お前の夢は？」
「.............兄さんには夢があるみたいだね」

「ある。俺は音楽をやりたい」
「かっこいい。兄さんはいつもかっこいいよ」

「お前の夢は？」
「.............ここを追い出されないこと、かな」

「シウ、お前、」
「兄さんだって気づいてるだろ、俺の......俺は、おじさんの子供かもしれないって話」

「そんなことない。お前は確かに父さんの、」
「おじさんは体が弱かったよね。........おじさんは、父さんとは仲が悪かった。昔、母さんを二人で、」

「そんなのは昔の話だろ！？」


スンヒョンが力んで体重を乗せ、ぎし、と芝生に車椅子のタイヤが食い込む。
そこで、Aがスンヒョンへ体をひねり、「でもほんとの話だ！！」とどなりかえす。

「........カット！」

Aにとって、こんなふうに力の拮抗した芝居ができるのはやはり今までとは感覚が違うのだろうか。演技力を認められた俳優同士の演技。初めてではないのに、毎回、この二人の演技は圧がある。


だが。


「もう一回、かな」

監督からはなかなかオーケーが出ない。

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