【名探偵コナン】安室透は存在しない【降谷零】

09 ページ9

風見




誤算だった。

降谷さんの妻がこれほどまで降谷さんに対して疑惑を抱くとは思ってもいなかった。

彼は事件に巻き込まれている。

証拠はない。あるのは根拠のみ。

「どうするんですか？降谷さんを見つけ出す手がかりを持っているとしたら彼女ですよ」

「ムリもねえだろ。結婚した相手は偽名を使っていて、素性も分からないって知ったらまず拒絶するのが当然だろう」

「降谷さんを見捨てるつもりですか？」

「そうは言ってないだろ。他に方法を探すしかない」

自分たちが降谷さんが事件に巻き込まれていると断言したのが、花屋を建てていると聞いたからだ。

現金で一括で支払い、店を建ててもらっている。

消えるつもりなら、そんなことをする必要がない。なら何故、自分たちの前からも姿を消したのか。そうせざるを得な事情があったのではないか。

何か意味があるはずだ。では何の意味が？

「大工に会いに行こう」

「昨日も会いました。無駄ですよ」

「昨日気づかなくても、今日気づくことがあるかもしれないだろう」

向かった商店街には昨日同様、足場を組まれた建設現場があった。

大工が自分たちを見ると、柔やかに手を上げてくれる。

「見つかったかい？安室さんは」

「見つかったら来てませんよ」

伊達さんが白い歯を見せ笑う。

「確かになぁ。でも俺も知ってることは全部話したぜ」

「安室さんと会ったのは失踪したと思われる二週間後で間違いないですか？」

「間違いないね」

「どんな些細な事でも良いです。その時のことを教えてくれませんか？」

「確か安室さんが指定した喫茶店で会って。時間は二時頃だったかな？俺が来てからコーヒーを三つ頼んだんだ」

「三つ？ということはその場に三人居たんですか？」

「三人だけど四人居た」

「は？」

自分と伊達さんが顔を見合わす。

「俺と相棒で安室さんを訪ねた。で、着いたら安室さんと飲みかけのカップがひとつあったんだ。安室さんは連れがお腹を壊してトイレに居てって。てっきり奥さんかと思ってたけど、店を出て窓を見ると連れが戻ってたよ。髭の似合わない兄ちゃんだった」

そいつが降谷さんを？

伊達さんを見れば、顎を摘まみ考えに耽っていた。



.

続く  (更新停止中) お気に入り登録で更新通知を受け取ろう

←08

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す