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「はあ?」
「もーっ、やっぱり菜々は私の言うこと全部信じちゃうんだもんなぁ。そんなんじゃ将来やってけないぞ〜。あと、辞めてね肌触るの」

もう触ってないのにべちと手の甲を叩かれた。深いため息と共に、一瞬で煮立った怒りを流す。

「ダルいって、そういうの。マジで。」
「ごめぇん」

そう言いながら花がもたれかかって来るのを受け止める。そのまま彼女は、硬くて決して心地よくないだろうに、わたしの肩に顔を埋めた。

「ねぇ」
「んー」

コイツ、マジで。

「ほんとは何があったの?」

めんどうくさい。

「...…な〜んにも、ないよっ」
「嘘つき」

わざとらしい耳障りな高音はまるでノイズのようである。困ったさんだ。こういう、上手く助けを乞えなくて、けれど態度の端々から漂う"困っている"のがもどかしく七面倒臭い。けれどこういうところがあるのだから彼女の魅力は高嶺の花で留まらないのだろうことも分かるので、毎度肩を貸してやるのだった。

「疲れちゃった」
「……そう」
「ねぇ、菜々ぁ。あんた、私が何度も何度も同じこと繰り返して失敗して打ちのめされて、そのたんびにあんたを恨んでるって言ったらさぁ、どうする訳ぇ?」
「いやに具体的じゃないの」

どういうこっちゃ、である。さらさらと彼女の髪を梳くように撫でながら思案する。こういうのはまともに考えて否定してはいけない、流れにそうのだ。

「ごめんねって言うかな。あなたを苦しませる原因にわたしがなっていたのならそれが一番申し訳ないの。痛い思いをするのはわたしであって欲しいよ」
「あっ、そ!」
「なんなの、そっちから聞いてきたくせに」

口で突き放しながらも、わたしは心の中にゆるゆると違和感が溜まっていくのを感じた。彼女は気づいていないだろうけど、わたしの言葉にびくりと肩を震わせて、そして今もそうだった。

「...消えないでよ」

気づけば、そんな台詞が口をついていた。

「消えないよ」

思いのほか、意志のはっきりした声で。

「わたしは、ずっと、そばに居る」

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作者名:花ら小片 | 作者ホームページ:https://marshmallow-qa.com/1yebl4asi8ufnkj  
作成日時:2024年8月12日 20時

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