めも (ページ3)

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ひどいひとページ3

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「そういう感情が欠如している訳じゃないと思うんだけどなぁ。昔はきちんと悲しんでたしね。…あ、流石に弟が死んだ時は泣くよ。俺はあいつの為に生きてきたし、さ。」

くっと頭の後ろで腕を組み、空を見上げる彼の表情は常のものだった。

死、というひとの最終地点にまで考えを向けないと得られない感情。こころのざわめき。極論ではなく、今のこのひとならそういう精神状態になっても可笑しくない気がした。

『じゃあわたしの時は？』

悪戯にそう言ってみると、柔らかい声で「泣いて欲しいの？」と返ってきた。

『どうだろ』

ほんとうに分からなかった。自分が彼にどうして欲しいのか、何を望んでいるのか。

「いいよ、あんたが死んだ時も俺はきちんと哀悲しんであげる」

それで、楽になれるのならば
言外にそういったのを悟って、どうしようもない虚しさが口内を満たした。参ったな、満たす予定のものは空疎なものじゃなかったのに。やっぱりひどいひとだと、強く思った。

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