ヘーゼルナッツ ページ1
*
ミルクのような滑らかに白いはだに、牡丹を潜めたような頬。顔に影を落とす長くクルンとカールした羽箒の繊細な睫毛。コロンとおっこちてきそうだ、と思ってしまうくらい大きな綺麗な宝石を隠した瞼には、まるで天使の鱗粉のきらきらしたラメが飾っている。甘く、かつセクシャリティな撫子色のアイシャドウが、陽の光を乱反射してそれはそれは彼女を引き立てた。
『わ、』
ヘーゼルは、思わず自分の着ていた高価なドレスをぎゅうと握りしめた。すると可憐にドレスを飾っていた小さなダイヤモンド達がぴかぴか光り、まるで"気を付けて!"と言っているかのよう__一本一本作家が丁寧に縫いつけたレースや薔薇を模した薄紅色の飾りがしゃらりと揺れる。普段ならものを大切にするヘーゼル。ましてや、お気に入りのドレスだったのだ。けれど、大切にしていたことも、お気に入りなことも、全部すっ飛んでって忘れてしまうくらい、衝撃的なことが起こった。
『ねっねえ!あれ、誰かな!?スッゴク綺麗なひとだわ!』
……まるで、おとぎ話のおひめさま。
鮮烈な輝きをひとつ、だだっ広いホールに落とした彼女。こつりとヒールを鳴らすと、その高らかに鳴る音につられた人々の視線を掬ってゆく。またこつり。こつり、コツリ、カツン。既に人々はおひめさまに釘付けだった。ほうっと息を漏らし、パートナーそっちのけで魅入っている。シャンデリアよりも眩い。明昼の主役は間違いなく、彼女。
伏せられた優雅な睫毛をゆっくりと持ち上げて、そろりと彼女は辺りを見回した。その様子がとんでもなく綺麗で、ヘーゼルは息を飲んだ。
やっぱり、私と同じ色!
輝きこそ違えど、その宝石の瞳はヘーゼルと同じ、ヘーゼルブラウン。
目の色が同じだと言うことにたまらなく嬉しくなって、どぎまぎした。
清廉に伸びた背丈に、華奢な足首。歩く度にふわふわ揺れる絹のような髪の毛。それに、私とおんなじ、ヘーゼルブラウン!
*
10人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:花ら小片 | 作者ホームページ:https://marshmallow-qa.com/1yebl4asi8ufnkj
作成日時:2024年8月12日 20時