命日 ページ15
私は彼のお墓に花束を持っていった。
今日は彼の命日。
花を供え、手を合わせる。
足音が聞こえて、私はその方向を見た。
「…Aさん…」
『お義母さん…』
彼の母だ。
彼女はどこか気品があり、それでいて誰に対しても分け隔てなく接する心優しいお方だ。
だが、今日は表情が暗く、花を供える手は震えていた。
「来て、くれたのね…」
『…はい』
・
・
・
・
近くの喫茶店で、私たちは向かい合って座る。
「…久しぶりだけど、元気そうでよかったわ。私も夫も、あなたのことがいつも心配で…」
ひとり息子の彼を亡くしてから、彼のご両親は豊かな自然に囲まれた田舎へ移住した。
それからはあまり会うことはなかった。
「…あれから2年。長いのか短いのかよくわからないけれど…」
『そう、ですね…』
彼女はホットコーヒーを飲み、再び口を開く。
・
「…Aさん、あの子のことはもう忘れて」
・
『え…?』
「もうあれから2年も経っているのよ。あなたにはあなたの人生があるの。だから…」
私は首を振る。
『嫌です。忘れたくありません…』
「お願いよAさん。あなたには、これから長い人生、幸せになってほしいのよ…っ」
彼女は両手で私の手を強く握った。
その細い腕と小さな手に、どこにそんな力があるのだろう。
「私たちのことは気にしなくていいんだから…っ」
『お義母さ…っ』
ポロポロと涙が零れる。
彼女もまた、涙を流していた。
ーーーーー
※主人公の義母セリフの「」の前には、わざと何も書いておりません。
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檸檬 - お気持ちの回復本当に良かったですT^T 小説の続きを書いていただき本当に嬉しい限りです! これからも頑張ってくださいね!ずっと応援し続けています♪ (2019年11月30日 20時) (レス) id: 93e7b62bd4 (このIDを非表示/違反報告)
ayane(プロフ) - 檸檬さん» ありがとうございます(;;)本調子とはいきませんが回復しました! (2019年11月27日 16時) (レス) id: 39d061f7d7 (このIDを非表示/違反報告)
檸檬 - 複雑な気持ちの中、わざわざお返事ありがとうございます。私は、いつまでも待ち続けていますので、気持ちが落ち着くまで、ゆっくり休んでくださいね。 こちらこそ、これからも仲良くしてくださいね。 お気持ちの回復、願っております…。 (2019年11月17日 19時) (レス) id: 93e7b62bd4 (このIDを非表示/違反報告)
ayane(プロフ) - sakuninoさん» ありがとうございます。なるべく早く戻ってきますね。 (2019年11月17日 10時) (レス) id: 39d061f7d7 (このIDを非表示/違反報告)
ayane(プロフ) - のりこさん» ありがとうございます。のりこさんのお言葉、とても嬉しいです。前向きに書けるようになったときはまたよろしくお願い致します。 (2019年11月17日 10時) (レス) id: 39d061f7d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayane | 作成日時:2019年10月19日 9時