12 いつも突然 ページ12
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それから彼は時々やってくるようになった。
一応、と言って交換した連絡先は、実は不要なんじゃないの？というくらい
コールもメールもラインも鳴らないし
来る時は決まって最初に会った日のあの時間くらいで
前触れも無く突然ピンポンとチャイムが鳴る。
この部屋に来るときの彼は、いつもとても疲れているように見えた。
顔色があまり良くなくて、目の下にはクマが出来ていたり。
けれど、仕事が忙しいの？なんて事は訊かない。
ここに来たという事は、今日の仕事は終わってるんだろうし
自由な時間にわざわざ大変な時間を思い出させるような事はしたくない。
「いらっしゃい」
「こんばんは。・・だいしょぶ？」
部屋まで来て、今更『大丈夫？』なんて訊く彼にいつも笑ってしまう。
「いいよ。ごはん食べた？」
「あんま食いたくねえ」
この返事もいつもの事。
「・・・そうめんなら？」
「食う」
「ん」
こんなやりとりも。
彼がここに来る時、サッパリあっさりしたものなら口にすると分かってから
私の夕食はそれまでよりもあっさりした味付けのメニューになる事が増えた。
「ちょっと待ってね。
薬味・・みょうがとネギがあるけど、みょうが食べれる？」
「うん。いっぱい入れて」
「いいよ」
最初は敬語だった言葉は、２回目の時にやめてと言われてやめた。
年上にタメ口をきくのは気が引けたけど、「でもヤダ」とか拗ねられて。
「どうぞ。おかずは無いけど」
「全然だいじょぶ」
いただきます、と手を合わせズルズル食べ始めたそうめんはゆでて玉にしておいたもの。
大野さんが来なければ、私の朝ごはんでもいいかなと思って少しだけ取り分けていた。
そんな事をしているくせに、どうしてか待っているという感覚は無い。
だた、疲れてる顔を見れば癒したくなる。
それだけ。
どんなものかは分からないけれど、傷を持つ者同士、それを舐めあってるような、そんな感覚。
彼はうちに来てゆっくり寝て、私はソファの上にころんと転がる彼の頭をそっと撫で
ふわふわと気持ちい髪に指を通しながら安らぎを感じ、彼が眠ったら私も自分の寝室へ。
男と女がひとつ屋根の下、こんなに至近距離にいるのにキスのひとつも無い。
でもそれが心地良い。
壁一枚隔てたところで眠る彼が、どうかぐっすり眠れますように。
そんな事を考えながら私も目を閉じた。
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seiran(プロフ) - nemuさん» nemu様。こんなにご無沙汰にしていたのにまた読んで頂けてとても嬉しいです(T^T)ありがとうございます!! (2021年4月1日 1時) (
レス) id: ca27f5ec67 (このIDを非表示/違反報告)
nemu(プロフ) - seiranさん、ご無沙汰しています。お話更新して頂けて本当に嬉しいです。ありがとうございます！ (2021年3月30日 22時) (レス) id: c40904f8f1 (このIDを非表示/違反報告)
seiran(プロフ) - Fu--chanさん» 年単位のご無沙汰での更新でした。こちらこそ、読んでいただきありがとうございます！ (2021年3月29日 0時) (レス) id: c5223b7e79 (このIDを非表示/違反報告)
Fu--chan(プロフ) - 更新ありがとうございます。 (2021年3月28日 23時) (レス) id: ad6226cb15 (このIDを非表示/違反報告)
seiran(プロフ) - nemuさん» こっそりでもいいので(笑)お付き合い頂けたら嬉しいです（＾＾） (2019年3月23日 18時) (レス) id: ace4cd6236 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：青藍(せいらん)
作成日時：2017年4月13日 9時
