3粒.噂 ページ3
「あっ、知ってる!綺麗な子!男子が噂してた!」
「いやいや、見た目だけだって!中身、相当黒いらしいよ。」
「そうそう。うちの友達、彼氏盗られたらしいよ。」
「マジ!?やばいねー。」
耳に入ってきた会話は、信じられないものだった。
1年5組の木下くるみって...くるみちゃんしかいないよね?
いやいや、あんなに優しくて私のことをいつも気にかけてくれる女の子が、人の彼氏盗ったりするはずないよ。
くるみちゃんが魅力的だから、男の子がくるみちゃんを好きになっちゃって、とかそう言う少女漫画でよくあるやつだよ、きっと。
噂って怖いな...。
くるみ「お待たせー!」
トレー持ったくるみちゃんが、笑顔で私の目の前に座る。
カレーかチキン南蛮で悩んでたのに、結局うどんを選んでるとこ、くるみちゃんらしいな。
チラッとくるみちゃんの後ろを覗くと、くるみちゃんのことを噂してた人たちが、こっちを見てヒソヒソ話してる。
きっと、くるみちゃんのことに気付いたんだ。
A「く、くるみちゃん!うどんにしたんだね!」
くるみちゃんがあの人たちに気が付かないように、咄嗟に話題を振る。
くるみ「うん!私の前に並んでたイケメンの先輩が、うどんにしよーって言ってたの聞いて、真似しちゃった。」
そうそう。
くるみちゃんはイケメンに目がないの。
あっ、でも、さっきの噂とは全然関係ないから!
こんなに美人なんだから、かっこよくて素敵な男の子が釣り合うんだよ。
なんてひとりであたふたしながら、やっとお弁当に箸を伸ばす。
昨日の夕飯で残ったとんかつを、レモンのジュレでアレンジしたもの。
...うん、美味しい!
ぱっと思いついたアレンジ料理が、こんな風に成功すると、すっごく幸せな気持ちになるなぁ。
「なにそれ美味しそう。1個ちょーだい。」
A「うん、どうぞ!」
ひょいっ
後ろから伸びてくる手。
...あれ?
くるみちゃんじゃないぞ。
てっきりくるみちゃんが言ったかと思って、お返事をしたのだけれど。
くるみちゃんは私の目の前で、うどんをすすってる。
えっ、誰!?
バッと振り返るとそこにいたのは、私のアレンジとんかつをもぐもぐと食べる男子だった。
「うん!めっちゃうっま!」
A「あ、ありがとうございます。...じゃなくて、誰ですか!」
「え、俺?俺は、」
「「「亜嵐!」」」
あら、ん...?
今多いキラキラネームってやつ?
いや、それよりも問題なのは、私のとんかつを食べたこと!
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作者名:いちご | 作成日時:2018年5月5日 22時