11粒.待ち合わせ ページ11
くるみ「亜嵐くん、ダンス部だもんねぇ。噂によると、めちゃくちゃ上手いらしいよ。また、Aが惚れちゃうわね！」
しらはまさんも...ダンス部...。
つまりくるみちゃんは、私が佐野くんのことを好きなのに気づいたわけではなく。
しらはまさんがダンス部だから、私がマネージャーのお誘いをOKしたって、思ってるんだ...。
くるみ「A、頑張ってね。」
くるみちゃんが、私の頭をコツンと小突いた。
私はただ呆然としていて。
悪いことが起きませんように。
平凡に静かに、佐野くんのお手伝いができますように。
心の中でひたすら、神様にお願いし続けた。
でもやっぱり、悪い予感というものは当たる。
数日後、佐野くんのお願いをOKしなかったらよかったのに。
って思わせるくらい、地味に生きてた私に不運が舞い降りてくることになる。
◇
放課後、佐野くんとの待ち合わせ。
髪の毛ボサボサじゃないかな。
唇カサカサじゃないかな。
リボン、うまく結べてるかな。
緊張に緊張を重ね、佐野くんがいらっしゃるのを待つ。
くるみちゃんからいつも、長すぎると言われる前髪。
だけど、前を見るのが怖くて、切る勇気も上げる勇気もない。
思い切ってピン留めで留めてみようかなって、ポーチの中を探るけど。
100均使用の、ちゃちな物しかない。
とりあえず手に取ってみて、パチンッと前髪を留めてみるけれど。
おでこがスースーするし、一気に明るくなった視界が、何だか落ち着かない。
慣れない待ち合わせに、慣れないことなんかしないほうがいいや。
うまく合理化して、ポーチのチャックを閉じた。
と同時に。
ガララッ
教室のドアを開く音。
A「佐野く...ッ！」
勢い良く後ろを振り返ると、そこには佐野くん。
ではなく、なぜか。
A「...しらはま、さん...。」
開いたドアの外側で、こちらを見つめるしらはまさんの姿が、そこにはあった。
教室を間違えたのか、それともまた私をからかっているのか。
どちらにせよ、早くどこかへ行ってほしい。
もうすぐ佐野くんが来るんだから。
でも私の意志とは相反して、しらはまさんはこちらへ向かって来る。
A「な、何ですか...。」
無言のしらはまさんはなんだか不気味で、思わず後退りをしてしまう。
もしかして、お昼の件でとてもお怒りなんじゃ...。
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作者名：いちご | 作成日時：2018年5月5日 22時
