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紫耀「いってきまーす!」

紫音「まーす」

「ほんとに気を付けてね?何かあったら電話してよ?」

紫耀「はいはい、大丈夫って!」




不安しかない。だけど、ここまできたら止められる訳もなかった。それに紫音があんまりにも嬉しそうな顔をして紫耀と手を繋いでるんだもの。



同じ顔してる。



ああ、親子だなぁ。





「さぁさ、Aちゃん座って座って!お茶でもしましょ」

「あ、はい!お茶淹れますよ」

「いいのいいの。コーヒーメーカーさんに頼っときなさい。旦那と子どもがいない間くらい息抜きしないと」




そう。あの人が私の旦那で、あの子は私たちの子どもなんだ。



だったそれだけの事実。



その喜びに慣れる日なんて一生来ないと思う。





「あの子は迷惑かけてない?」

「一生懸命父親をしようとしてくれてます。でも、」

「いいのよ?ほら、お母さんになんでも言ってみなさい」

「……やっぱりステージに戻りたいんだろうなって」

「そう、ね。あの子の人生の半分はステージの上だったから」

「っ、」

「だけど、そこから降りることを決めたのも、あなたたちと歩むことを決めたのもあの子だから。知らないふりをすることだって出来た、お金だけを渡すことだって出来た、でも、それが出来なかった。それをしたくなかった。それが、あの子の出した答えだから。」

「お母さん、」

「きっと、ごく当たり前のお母さんがいて、お父さんがいて、子どもがいてっていう家族に憧れてたんでしょうね。ほら、あの子バカだし不器用な子でしょ?だからね、帰る場所が欲しかったんだと思うの。」





それでもいつも心のどこかをつきまとう罪悪感と後悔が消える日も一生来ないと思う。




私たちはお互い何かを背負って、生きていくんだろう。







「あの子に居場所を与えてくれてありがとう」





後悔してもしきれない日々の中で、やっと息が出来た気がした。






「あんなだけど男の子なんだから、たくさん頼ってあげて。あの子本当にAちゃんのこと大好きだから」





そして、少しだけ許された気がした。




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作者名:aoi | 作成日時:2016年12月10日 22時

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