干物女、恋愛するってよ。2 (ページ34)

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無言のまま
私たちを乗せたエレベーターは一階に到着。

珍しい。
珍しいぞ。

怒ってる姿なんて見せたことのないサトチが
なんか、こう、
ぷんってしてる。

…でも、可愛い。

そのままサトチは私の右手を引っ張り
マンションエントランスを抜けて外へ。

振り返ればそこは
高くそびえ立つ立派なバベルの塔。
もとい、シャチョー様のご自宅。

内装も高級感プンプンしてたけど
外から見たら腰抜かしそうだわ。

儲かってんな！
ninoco！！

と、そんな
超ーーーッ高級な億ションの前に
ボロリと一台の自転車。

あれはサトチのママチャリ
通称3104号。

「あ！3104号！」

高級億ションとボロチャリの
なんともミスマッチなコラボ風景に思わず声を出してしまった。

あ、そうだ。
サトチちょっとぷんっモードだった。
ウッカリ。

やっちまった。と
チラッとサトチの顔を覗けば
ふわぁって
いつもみたいに笑ってて
ぷんっモードなのは気のせいだったのかなって
こっちもふにゃ～って顔を緩ませたら

「コラ。
少しは反省しなさい。」

「いだ！」

繋がれていた右手は離され
代わりにデコピンされた。

「Aは女の子なんだよ？
男の家にひょいひょい上がり込みすぎ。」

「でもー、今回は…」

「食べ物に釣られたって相葉ちゃんから聞いた。」

あちゃーーーー。
相葉さんめ、余計なこと言ってー。

「うん、反省。」

「んはっ、素直。
じゃ、この話はもう終わり。」

やっぱりふわぁって笑う。

「家まで送ってく。
てか、セルフサービス。
今日はAがチャリンコこいでよ。」

「え？ヤダよ。
干物女は基礎体力がない。」

拒否してるのにサトチはさっさと後ろに座って
「こいで。」と催促する。

えええ？転んでも知らないからね！

サドルにお尻を乗せ
サトチの「せーの。」の掛け声で
勢い付けてペダルを漕ぎ始めた。

わ、懐かしい感覚。

何年ぶりだろう？
自転車をこぐのなんて。

へっへー♪

なーんて。

得意げに夜の自転車ドライブを楽しみ始めたら…

「ん？サトチ…？」

音もなくスルッと
サトチが私の腰に腕を回してきた。