6日目。 ページ7
自分の顔の近くに彼が居た事に気付いた時には、もう遅かったのだ。
「な い しょ 」
「講義、頑張ってね。Aちゃん」
彼は、私の耳元へ口を寄せた。
まるで悪戯が成功した子供みたいに、さとみさんが楽しそうに笑う。
耳に残るどこか艶っぽい低音は脳内と鼓膜に反響して、私の心臓を鷲掴みして放そうとしない。
私は思わず「…あっ」と叫びかけた。
けれどもその声は声にならずに、次の瞬間喉の奥へ引き返した。
「またね、Aちゃん。」
別れの言葉を告げて、彼はくるりとUターン。
私がキョドっている間に彼は淡々と行動する。
私に向かって 手をひらひらと振りながら、歩き出した彼には完敗だ。
だけど、これだけは、伝えなくちゃ。
私は意外と負けず嫌いな所があるらしい。
大きく息を吸って、道行く全員が振り向く
くらい大声で。
彼に、届きますように。
「さとみくん、ありがとう!!!」
彼に張り合うように名前で、求められていたタメ口で、言葉を紡いだ。
届け、届け、届け。
まるでここには私と彼しか存在しないんじゃないかと、錯覚させるくらい長い長い沈黙が辺りを包む。
たった数秒なのに、何十秒にも、何時間にも感じる。
見つめる先は、彼一人。
私の視界には彼しか映らない。
彼の髪が視界の端でふわりと揺らいで。
___届いた。
「どういたしまして」
彼は振り返って、頬を綻ばせて嬉しそうに目を細めて笑った。
同じ大学の生徒が私をじろじろと見ているが
そんなの全く気にならなかった。
只、彼に想いが届いたことが嬉しくて。
再び彼に手を振って、私は大学へと足を早めた。
"この辺の大学、ここしかないじゃん"
彼が私の後ろ姿を見送ってから、くすくすと笑っていたのを私は知らない。
*
さとみくんの嬉しそうな顔を浮かべては心が暖かくなって、いつもより格段と軽やかな足で教室へ向かう。
ガラリと、ドアを開けて向かうは彼の元。
「おはようございます、Aちゃん」
「おはよう春斗くん、席ありがとう!」
向かって来るこっちに気付くと愛らしく可愛い笑顔で私に声をかけてくれる。
花が開くみたいに、満開の笑顔。
彼の名前は、今井春斗くん。
優しくて暖かくて頭も良くて、噂では歌も上手いらしい。聞いたことは無いので断定は出来ないのだが。
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チョコ - めっちゃ好きです(( (2020年11月9日 1時) (レス) id: b8ba54da77 (このIDを非表示/違反報告)
ももんが(プロフ) - めっちゃおもしろいです!いい感じにシリアスだったり、ころちゃんの猿キャラだったり、キュンキュン要素だったり…最高です!!さとみくん推しで見に来たんですがこれはるぅとくんオチめっちゃ気になります…これからも期待してます!ありがとうございます!! (2020年3月15日 3時) (レス) id: 43039e50b7 (このIDを非表示/違反報告)
瑞乃(プロフ) - ゆらさん» 返信遅くなりすみません!表現力が乏しいので分かってもらえるか心配していたので良かったです〜! ありがとうございます!励みになります (2020年2月14日 1時) (レス) id: d619556bbc (このIDを非表示/違反報告)
瑞乃(プロフ) - 愛由さん» 遅くなりすみません!ゲーム上手い組のさとるぅと凄く好きなので贔屓してます笑 読んでくださりありがとうございます。 (2020年2月14日 1時) (レス) id: d619556bbc (このIDを非表示/違反報告)
ゆら(プロフ) - 名前も出されていないのにどのメンバーか分かってしまう私はもはや病気です。。。これからも頑張ってくださいね! (2020年1月2日 23時) (レス) id: 7e1be6dd9a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑞乃 | 作成日時:2018年12月16日 23時