隣の部屋のさとみくん。【すとぷり】

36日目。 ページ44

「……はぁ！？！？」


いつもよりやけに伸びているのは旬ジャンルだからだと思っていた。まさか、本人が反応してくれるなんて。


私は普段からすとぷりのファンアートを書く人間では無いのだ。まさか、こんなに早い段階で見てくれるなんて。


私の動揺を他所に数字は勢いを増していく。震える手でるぅとくんのページを開くと、いいね欄に私のイラストが見える。


おかしい、なんで、こんなに早い？ 本人に見て貰えた事よりも彼が私を見付ける速さへの衝撃が勝る。確かにすとぷりギャラリーのタグは付けた。それでも、この速さは明らかにおかしい。



____それこそ、私の通知を付けてくれている子達と同じくらい早いのだ。



" なんだ、答え出てるじゃない。"


私の中の悪魔が囁いた。嘘だ。ありえない。だって彼は私の部屋で私の絵を見た時驚いていた。あの反応は初見の反応で間違いない。



"でも、あの絵はネットに投稿したものじゃないでしょ？"



そうだ、あの絵はまだ公開していない。描いたはいい物のどこか納得いかずに終わってそのままにしていたものだ。……だから、驚いていたのか？



"しかも、春斗くんに絵を描くって言った傍から、るぅとくんの絵をあげてる"



……つまり、今このタイミングで私がこの絵をあげるのは 私がるぅとくん= 春斗 くんって知ってますよって言ってる様なものじゃないか。




背筋を冷たい汗が虫を這うように流れていく。思考回路はもうロクに働かない。どう考えても私の自爆。最近聞いたすとぷりの曲の某猿くんの"おつぷりです〜〜！"が脳内再生されている。




スマホを持つ手がぶるぶると震える。
バレてしまった。私が絵師の佐々木だと。るぅとくんのイラスト書いていること。配信も歌も聞いていること。……私がるぅとくんを応援していること。



この関係が続く事を望んでいた筈なのに、馬鹿な私は自分で断ち切ってしまった。もう、彼とは会えない。
お互いの家を行き来して一緒にゲームをすることも、大学で駄弁ることも。全て終わり。






春斗 明日の午後、時間取れたりしませんか?



「…………」


はい、と春斗くんのLINEに返信をする。




私は、君との関係の終わりを悟った。



液晶画面が点滅し続けるスマホが目に入ったが、ソファーに身を投げて瞼を閉じた。

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