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彼はこんなに執着するやつだっただろうか、と考えた。それこそ私も彼も当時は上手くやろうとしていただろう。それでも無理だったじゃないか。だから仕方ないんだよ。私たちは。
それを、上手に伝えたつもりだった。彼も納得したように頷いたはず。だから、こうなってた。なのに今、こうなってる。分からないのだろうか。
『...ちゃんと言いましたよね。お互いに。』
｢...だって、まだ、好きや。後から考えた。納得できへんよ。次は上手くいくと思えへん？失敗したら、やり直しだって、｣
『できへんよ。だって、私たちは終わったから。』
｢...なんで。時計、とっててくれたんやろう？｣
彼が時計を渡した時のことを思い出した。
"これ、俺らが過ごした時間の証やからな。そういう意味で大切にしてや。"
そう言えば、そう言っていたな。なんて。
『...そうね。もう止まってる。』
｢でも形は残ってる。｣
『帰ったら処理するのよ。』
｢...Aは捨てれるん。あの時計。｣
彼と過ごした、その証。私は。
沈黙は肯定と見なされたようだ。
｢...嘘やろう？なあ。だって、俺ら大好きって言い合った仲やん。｣
無理やり顔を合わせられた。彼は今まで見た事ないほどに悲愴な顔をしていた。私の目を見て、バッグを見て、そして、俯いた。右腕を掴んだ力だけは緩めずに。
｢...A。｣
『...もう一度言うよ、終わったんだよ。私たち。』
｢終わらせへん。嫌や。お前がここにおるのになんで俺は離さなきゃいけない？｣
彼は無理やり口付けてきたので、私は彼の額を左の手のひらで強く押した。彼は悔しそうに唇を噛む。
『...。』
｢...ハッ、そんな目向けられたの初めてや...。酷いわ。｣
『お互い様ですね。』
私の腕から彼の手を無理やり離し、合鍵を握らせた。彼はゆっくりと手のひらを開き、見つめた。
｢...A。｣
『さよなら。』
ボストンバッグのチャックを閉め、玄関へと歩みを進めた。何度も通った廊下。これで最後だ。靴を履いていると、急に後ろに気配がした。またもキツく抱きすくめようとするのでその前に振りほどく。
｢...ごめんな。｣
『...お世話になりました。ではお元気で。』
ドアを出た。もうさすがに追いかけては来なかった。彼の握っていた右腕は真っ赤になっていた。
『...加減が分からないんだから。』
＿＿＿＿＿＿＿＿…
(其れ即ち時限式。)
唐突に書きたくなった話。
参考:I love you /クリスハート
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ちぃ汰。(プロフ) - 雨々さん» ご足労賜り誠にありがとうございます。貴方との出会いはこのシリーズでしたね、拙い私の文章であれど、貴方と繋がるきっかけになれて本当に嬉しいです。一作者としても、一友人としても、精一杯の感謝をここに。 (2021年5月5日 18時) (
レス) id: 66362bbae9 (このIDを非表示/違反報告)
雨々(プロフ) - 好きです。ここまでの執筆本当にお疲れ様でございます。あなたの作品に出会えた事、あなた様に出会えた事。本当に嬉しく思います。ありがとうございました。 (2021年5月3日 9時) (レス) id: 0ec44c6a23 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ汰。(プロフ) - 琴葉さん» 毎度毎度、貴方には本当にお世話になっております。この作品が終えれたのも、貴方のお力添えがあってこそ。こちらこそありがとうございます。続編についてはご期待に添えると良いのですが。御足労痛み入ります。精一杯の感謝を足らぬ言葉でここに。 (2021年4月28日 20時) (レス) id: 3f437b8d31 (このIDを非表示/違反報告)
琴葉(プロフ) - 最後の最後まで大好きな文をありがとうございます。そしてお疲れ様でした。もしもまた続編がありましたら、是非とも1ファンとして読ませて下さい。ひとまず、本当にお疲れ様でした。 (2021年4月27日 18時) (レス) id: ba4822cc62 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ汰。(プロフ) - 琴葉さん» お気に召して頂けたなら何よりでした。とんでもない、身に余る言葉の数々をありがとうございます。是非またお越しくださいね、お待ちしております。 (2021年2月27日 0時) (レス) id: 3f437b8d31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちぃ汰。 | 作成日時：2020年7月3日 0時
