【d!】Canele【短編集】

▽ ページ14

.









大きなホールに、響く足音が相も変わらずひとつ。
向かう先にはふたつの横たわる影。


そっと、白い首元に手を当てる。
マフラーどころか肌も髪も赤く染まった書記長。
濃い隈も分からぬほどに、赤く化粧された彼は、総統より幾分か前の方に倒れていた。






『お疲れ様、』



彼が一番安心した顔をしてくれる言葉を、選んだ。



私の足音は小さくなっていくが、嫌に耳の奥で響いた。不思議な感覚だった。
雨音は遠く、遠く、妙な静けさを際立たせる。




私は彼の前に跪いた。




『...御報告申し上げます。敵国殲滅を確認致しました。かの国はもう再起不能でしょう。放って置いても崩壊は時間の問題かと思われましたが。貴方様ら不満に思われますことと存じましたので元首の首は然とこの剣が、貫いたことを、』





報告の途中で、声を震わせるとは、何たる事だろうか。でももう止まらなかった。もういいだろう。どうせ聞く人などいない。内容もめちゃくちゃだった。知らない。知らない。







『...もう、ええやろ、私、頑張ったやろ。仇は、取ったから。』





総統の白い、陶器のような頬を撫ぜた。
本当に素晴らしい人だった。



私は、守れなかった。



この国も、仲間も、誓いも。



国をひとつ滅ぼしたところで、私を包む体温はひとつとして戻ってこないらしい。



____________…



かの誓いは、今何処(いずこ)に。


(この心臓は、貴方に捧げましょう、総統閣下。)




琴葉作、してみたシリーズの夢主をお借りしました。


当話コンセプト
''もしも貴方だけが生き残ってしまったら''


リクエスト内容・
夢主の貸出(適切な言葉見つけられなくてごめん)
リクエストありがとう！


お借りした夢主の作品シリーズ。
↓
http://uranai.nosv.org/u.php/slist/novel-miu226664/

君色【cn】→←赤いぺトリコール【some】

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す