. ページ2
「何じゃァ！！」
「何事だア！！」
それも束の間。静かな屋敷に響いた音を聞きつけた者たちによって縁側は次第に騒がしくなった。
黒スーツを着た強面の男たちが怒声を上げながら集まり、部屋の惨状と少女の只事ではない風貌にギョッと目を剥く。
「な！？お嬢っ何してンすか！？」
男たちの怒声は少女の存在に気付くと困惑と心配の声色に変わった。
「お怪我をされてるんですか！？」
「テメーら医者呼んで来い！！！」
大の大人にお嬢、お嬢と連呼され、収まりかけた怒りが沸々と湧きたっていく。
「お嬢、動かねェで下さい。すぐに俺らが片しますンで！」
「お嬢って呼ぶな！！！！！」
気が付けば怒鳴っていた。少女故の拙さは抜け切れていないが男たちが動きを止めるには十分な迫力があった。
「え、いや…しかし」
「呼ぶなったら呼ぶな！！！だまれ！！！」
少女の咆哮に誰もが口を閉じた。
言う通りにしなければ今にもこの少女は足元に散らばる破片を踏み抜きそうで下手に口を開くことも出来ず、かと言って近付くことも出来ない現状に男たちがもたつくなか。
「おいおい騒がしいじゃねェか」
狼狽えていた男たちとは似ても似つかない、重厚な声に少女が振り返った。
この屋敷の主で、組織の総裁である九世龍心の姿に男たちは一斉に道を開け、頭を垂れた。
それを気にも止めず龍心は部屋の惨状を見渡した。
「派手にやらかしたなァ…」
ゆっくりとした物腰の柔らかい口調ではあるが、その眼光は鋭く男たちの誰かが息を呑んだ。
「テメーら下がれ。始末はこいつにやらせる、医者も呼ぶな」
有無を言わせない龍心の迫力に男たちは首筋に冷汗を流しながら、一礼をすると各自持ち場へと引き返して行った。
男たちが去り、部屋に静けさが戻る。俯き拳を握り締める少女に龍心は溜息を吐く。
「稽古はどうした。一本も勝ち取れねェテメーがこんなとこで油売ってる暇ねェだろう」
「やりたくない」
「ああン？」
「やりたくないって言った」
龍心に負けじと少女も睨み返す。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 70人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
花恋(プロフ) - 更新再開を心よりお待ちしてます (2021年1月30日 3時) (
レス) id: e938aee02d (このIDを非表示/違反報告)
ハチ公(プロフ) - 花恋さん» コメントありがとうございます。不定期更新ですがまた読んでやってください(^^) (2020年7月29日 21時) (レス) id: 5dc992d6af (このIDを非表示/違反報告)
花恋(プロフ) - とても面白いです！これからどんな展開になるのか今からドキドキです^ - ^ (2020年7月22日 22時) (レス) id: 2b0127518b (このIDを非表示/違反報告)
ハチ公(プロフ) - りさん» コメントありがとうございます。嬉しいです(^^) (2020年7月7日 22時) (レス) id: 55961c2479 (このIDを非表示/違反報告)
り(プロフ) - すごく面白いです、更新楽しみにしています！(^^) (2020年7月7日 5時) (レス) id: 0ffa97bc4b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ハチ公 | 作成日時：2020年7月1日 9時
