114.会釈 ページ14
*
観に行くのは田鍋遥のいるチームの試合で
Aのお父さんはそこのOBだ。
今年はホームラン王がかかっているらしく、
シーズン終盤でチームとしても
現在リーグ1位だから注目度が高い。
当日はAのお父さんが
テレビ中継の解説をやるとのこと。
.
Aに言われた通りメンさんと
関係者入口から通してもらって、パスを受け取る。
仕事の関係で先に来ているらしいAには
着いたら連絡してくれと言われていたので
連絡すると、《今行きます》と返ってきた。
「すいません、お待たせしました」
パンツスーツ姿で仕事モードのA。
かっちりした感じを見るのは久々だ。
「久しぶり、Aちゃん」
「お久しぶりです。わたしも正確には部外者なんですけど、父に案内役を任されましたんでご案内しますね」
「Aちゃん顔パスでしょ？(笑)」
「まあここはほぼそうです(笑)どうぞ。試合前なんであれですけど……どうします？まだ開場前なんでグラウンド降りても騒がれないですし」
もちろん初めて来たわけではないので
中の勝手はある程度分かるが、
知っている時と雰囲気は違う。
廊下で選手ともすれ違ったりして
Aはその度に声を掛けられている。
メンさんは目立つので
「今日いらしてたんですね！」なんて
マスクしてても声掛けられたりして、
そこで一緒にいる俺も気付いてもらえる感じ。
“Aちゃんおつかれ！”
「お疲れ様です！あ、この間のどうでした？新素材の」
“Aさーん”
「お久しぶりです！また今度飲みに行きましょうね」
「玲於、大丈夫？(笑)」
「え？あー……」
次から次へと声を掛けられるAを見て
少しびっくりしていた。
「なんかごめんなさい」
「大丈夫だよ」
「父、いました」
「あー、お久しぶりです」
「お久しぶりです」
「今日はありがとうございます」
Aのお父さんももちろんスーツで選手と話していた。
「田鍋選手だよ、ほら」
メンさんに言われて見ると、田鍋遥がいて
Aのお父さんが話しかけに行く。
「お、遥」
「お疲れ様です」
「調子どう？」
田鍋遥はAのお父さんに挨拶した後、
Aと俺らを見て軽く会釈して通り過ぎて行った。
「……開場しちゃうんで、そろそろ行きますか」
*
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作者名：はな* | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ge_hana_/
作成日時：2020年10月17日 7時
