112.遠慮 ページ12
*
「……なんか観る？」
「いいの？」
「そんな遠慮しなくていいって」
「……うん、ありがと」
「遠慮してるつもりはないんだけど」って小声で溢す。
昼飯の後はAが選んだ映画を観た。
「おもしろかった！そろそろ帰ろっかな」
「今日も泊まってけば？」
「そうしたいのは山々なんだけど……明日朝早いし」
「まだ夕方だし、もう少しいて」
「……わかった。まだ帰らないから……離して？」
「え？……ああ、ごめん」
無意識のうちにAの腕を強く掴んでいた。
少し恥ずかしいし、気まずい空気が流れる。
「玲於くん」
「ん？」
「……どこにも行かないから心配しないで」
最近少し不安になっていたのを
その一言と優しい表情が払拭してくれる。
「……ん。あのさ……前に俺は『遊んでないんだね』みたいな話してたじゃん」
「あぁ……うん」
「その……前に付き合ってたやつは浮気してたの？」
「何人か会ってる人がいるのは知ってた……知らないフリしてたけど。ほら、わたしがキス拒んでたのもあるし……最初はよかったけど段々気持ちが離れてくの気付いてたの。最終的にキスのこと出されてフラれて……正直別れても何とも思わなかったんだよね」
当時、『あんまり落ち込んでない』なんて言ってたっけ。
「……わたしも玲於くんに出会って惹かれてたし。思い返すとちゃんとお付き合いしたって言える人今までいない気がする」
「そう……なんだ」
「なんかね……勝手なイメージで特定の人作らないっていうかいらないんだろうなって思ってたから……わたしの周りそういう人多かったし、今までは傷付かないためにもあまり深入りしないようにしてて」
最後に小さく「ごめん」と謝られる。
「わたしが色々迷惑かけても、こうやってちゃんと優しくしてくれるのすごく嬉しい」
「俺には我慢とか遠慮する必要ねえよ。もっとわがまま言ってくれていいし、そんなんで嫌いになったりしない」
「ありがとう。でも、玲於くんには結構言ってると思う」
「そう？」
「玲於くんの前では割と素だよ？もう弱いとこも見られちゃってるし」
にっ、って笑うAを見て
こちらもつられて口角が上がる。
いつものちょっと子どもっぽくて
どこか抜けた感じのAは
俺の前だけでいいよってそう思う。
「その……大好きだから」
「……知ってる」
*
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 496人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「GENERATIONS」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はな* | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ge_hana_/
作成日時：2020年10月17日 7時
