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それから高杉はAを幼稚園から迎えに行った後、会社へ戻らなくなった。
彼女が夜眠りにつくまで傍にいる……というよりも、高杉は見張っているような感覚だ。彼は彼女が眠りについた後は自室で仕事を始めるのだが、気がつけば頭の片隅にいつもAがいた。
ある日、ようやく吐き気が治まってきたAが果物を食べている姿を高杉は視界に映す。
しかしその小さな手には似つかわしくないほど大きなフォークが握られており、食べにくそうに桃や苺を刺して食べているではないか。
不意に食器棚を見るも、そこには自分でさえもあまり使わないガラス製の食器ばかりだった。
休日の今日、幼稚園はなくAは果物を食べてお腹が膨れたのかウトウトし始める。ソファにちょこんと座って肘置きにもたれる彼女に高杉はブランケットをかけ、車のキーを手に取って家を出た。
しばらく車を走らせた先にあるショッピングモールへ車を止めて中に入って行く。
そして食器売り場を見つけた彼は、子供用のスプーンとフォーク、プラスティックで出来たコップや小皿をカゴに入れた。
店員に「プレゼント用ですか?」と聞かれたが、彼は違うと首を横に振るう。
『パパー! だっこー!』
そう言って高杉の横を駆ける小さな子供。父親らしき人物は子供をひょいっと抱き上げ、餅のような頬に頬ずりする。
ニコニコと笑う子供に高杉はAの姿を重ねるも、彼女がどんな風に笑うのか彼には分からなかった。
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えりんぎ※息を吸う(プロフ) - 昔の自分と比べてしまいました。あなたの作品がとても好きです。この作品に出会えたこと、心から感謝しています。涙を拭きながら、読み進めようと思います。 (2019年1月27日 16時) (レス) id: 5e55bdde31 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - こんにちは、コメント読んでいただけているかどうか…でも、もしよんでくださるなら。わたしは、ハルさんの作品に心底惚れています。自分の書きたいものをえがくことって素晴らしいと思うんですよね!だから、周りの意見に惑わされず「ハルさんの作品」を待ってます (2018年5月2日 0時) (レス) id: a53110be97 (このIDを非表示/違反報告)
kaya(プロフ) - 今更...な感じがしますけど、コメント失礼します。私、この作品読みながらずっと泣いちゃってました。素晴らしい作品だと思います。何回読んでも飽きないですね!感動しました。 (2018年4月2日 22時) (レス) id: 504932b45f (このIDを非表示/違反報告)
ハル@六月に一時帰還予定(プロフ) - みなさんコメントありがとうございます〜( ; ; ) お一人お一人にご返信をしたいのですが、下の方のコメントが消えてしまいそうなので割愛させていただきます( ; ; )無念……。沢山の励ましのコメントを胸にこれからも頑張って行きますので、応援お願いします!! (2018年2月1日 17時) (レス) id: 9ebc1e1d82 (このIDを非表示/違反報告)
クローバー - 心に響きました。恋愛要素など無くとも、人を感動させられる小説は素晴らしいと思います。これからも頑張ってください。応援しています! (2018年1月12日 20時) (レス) id: acfcc66616 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/harumemory
作成日時:2017年10月6日 18時