page164 優しさの形 ページ24
「大丈夫。大丈夫だよ。」
顔を上げると、穏やかな表情をしたヒロと目が合った。ヒロは優しくAの震える手を握っている。どうしてだろう、目が離せない。
「大丈夫。」
ヒロはそれ以上言わなかった。しかしその代わりに、Aをそっと抱き寄せた。
心音が、伝わってくる。トクントクンと心地よいリズムで脈打つそれに、自分の呼吸を合わせた。だんだんと、恐怖が薄れていく感じがする。
カヅキ「今日は、この辺にして帰るか。」
この状況をみていたカヅキが切り出すと、周りのみんなも頷いた。コウジとカヅキが自分達の方へ歩み寄ってくる。
ヒロ「……落ち着いた？立てるかな。」
声掛けに黙って頷くと、ヒロは腕で身体を支え立たせてくれた。
ヒロ「皆ごめんね！また来るから。」
カヅキ「悪ぃ！」
口々に別れを告げて店を出る。落ち着きは取り戻したものの、胸騒ぎはおさまらない。
貧血からか、視界がはっきりせず、うまく歩けなかった。
カヅキ「それにしても、なんだったんだろうな。」
コウジ「うん…どうしよう…。」
ヒロ「……あとで話し合おう。それよりAちゃんフラついてるよ。歩けなさそう？」
カヅキ「え、おいおい大丈夫か……？」
心配されている。何か、言わないと。
A「……はい。」
振り絞った返事だった。今の状態では、これが限界なのだ。うつむきながら歩いていると、垂れ下がった髪が揺れているのが見える。それを見ていると、名前も顔も分からない彼女の笑い声が、蘇ってくる。嫌だ、と思った途端、胸の奥にズキッと痛みがはしった。感じたことのない痛みだったが、その痛みはすぐにおさまった。
カヅキ「…辛そうだな。ヒロお前、背中に乗せてやれよ。」
ヒロ「おんぶしろってこと？」
コウジ「そうだねその方がよさそう。」
確かにその方が助かるのだが、あまり迷惑はかけたくない。
A「あの……大丈夫で…」
ヒロ「何言ってんの。大丈夫じゃないでしょ、ほら乗って。」
遠慮もさせてくれなかったが、それが優しさなのだろう。目の前でかがんだヒロの背中は思ったより広かった。
ヒロ「よっと……軽いな。」
おぶられると、背丈の分視線が高くなった。
運んでもらうというのはこんなにも楽なものなのか、と実感する。
疲れと安心感からか、眠くなって瞼を閉じた。
目の前に暗闇が広がっても、今はもう怖くない。
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kiko(プロフ) - コノミさん» コノミさん、いつも読んでくださりありがとうございます！本当ですか！とても嬉しいです励みになりますｯｯどうぞこれからもよろしくお願いしますね♪ (2020年4月9日 18時) (
レス) id: 92cacadd3e (このIDを非表示/違反報告)
コノミ(プロフ) - めちゃくちゃずっと読んでてめちゃ胸キュンします！！このシリーズは大好きなので 頑張ってください！ (2020年4月9日 0時) (レス) id: c314281d85 (このIDを非表示/違反報告)
kiko(プロフ) - えぃかさん» えぃかさん、読んでいただきありがとうございます！好みｯｯとても嬉しい褒め言葉です……まだまだ下手な文章ですがこれからも見ていただけると嬉しいです♪ (2020年2月11日 2時) (レス) id: 92cacadd3e (このIDを非表示/違反報告)
えぃか(プロフ) - めっちゃ好みの小説です！！続き楽しみにしてます！更新頑張ってください！！ (2020年2月11日 1時) (レス) id: 12b917d369 (このIDを非表示/違反報告)
kiko(プロフ) - いちごみるくさん» いちごみるくさん読んで頂きありがとうございます！そう言ってもらえて光栄です……(><)嬉しいです頑張ります！ (2020年1月13日 14時) (レス) id: 92cacadd3e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kiko | 作成日時：2019年3月24日 2時
