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#43 side
練習終わり、頼み込んで直で帰る事を許して貰った。
試合もあるけど、それどころではなかった。
飛び乗った新幹線で、職員さんからの電話の内容を反芻する。
落ち着いてなどいられなかった。
白い病室に眠るAちゃん。
その姿を見たら、自分が本当に情けなくて苦しくなった。
守り通す、そう誓ったはずなのに、俺は何をしているんだ?
Aちゃんが目を覚まして、その瞬間に本当にほっとして、泣きそうになったのを悟られないように明るい声を出した。
「あ、Aちゃん、起きた?」
Aちゃんの視線がこちらへ向いて、目が合って、掠れた声がする。
「や、まもとさん…」
「良かった、記憶はしっかりしてるんかな」
心なしか俺を見て表情が緩んだAちゃんだったが、すぐに苦しそうな顔に変わった。
「…ごめんなさい」
俺に話す声が震えている。
怖い思いをしたんだろう。
そして、また何か良くないことを考えてる。
Aちゃんにそんな言葉を言わせているのが辛くて、今すぐにでも抱きしめられたら良いのにと思う、
…思うけれど出来ない。
伸ばせなかった手を強く握った。
Aちゃんを傷つけるのが怖くて、
そして結局は自分が傷つくのが怖くて。
何で、俺はこんなに情けないんだろう。
俺は今まで何をして来たんだろう。
もう苦しんで欲しくないと願った、それなのに。
唇を噛む。
Aちゃんが俺を見て、涙を流した。
ごめん。
ごめん、Aちゃん。
手を伸ばして、ぎこちなくその涙をぬぐう。
触れた頬が少しひんやりしていた。
どうかもう謝らないで。
俺、もっと強くなるから。
苦しそうなその顔にどうか笑顔が浮かんでいて欲しい。
俺のただの我儘でしかないけれど、
まだもう少しだけ、チャンスが欲しい。
(必ず、君を守るから)
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かなと - 編集画面の関連キーワード入力の下をよく読みオリジナルフラグをお外し下さい違反です (2019年6月10日 21時) (レス) id: b946a130ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:るる | 作成日時:2019年6月10日 21時