☆（2） ページ35
「ショウは、それで、どうするん。実家もどるの？」
「もどらないよ」
苦笑いして、ショウが首を振る。
彼の実家はそこそこな資産家で、ショウが働かなくたって暮らしていけるほどのお金は当たり前にあると思う。
ただ、ショウが拒否してるというか。
あの家を。
資産家故に、幼い時から両親は忙しく、あまり関心を持ってくれなかったようで。
だけど、ショウが絵を描いたときだけは、褒めてくれた、と。それが、自分が絵を描き始めた理由だ、と、昔言っていた。
両親も絵の才能を認めていたのか、
ショウは当時まだ学生であったのにスカウトしたミナミさんに、簡単に彼を引き渡した。
そして、とある関係者パーティーで、デザイナーの卵だった私と出会う。
ショウは、自分に関心を持ってくれる立花さんのことが、割と好きだったと思う。
いくら不条理な束縛をされても、いいんだと。
あんな実家より、数倍マシだと。
立花さんの過呼吸の世話も、嫌な顔せずしていた。
だけど、私とショウが親密になったあたりから、立花さんは過激になりはじめて、
それで、あの事件があって。
私とショウの間に、溝ができた。
「俺、教授になる」
「……え？教授？」
「大学教授。かっこえーやろ？」
「え？嘘やろ？」
「立花さんの紹介で、面接してもらって、受かった」
「……立花、さん、」
「あの人、今、病院通い。だから、しばらく手を引くって」
「過呼吸、ひどいん？」
「や、っていうより精神…の？まあ、良い意味で、やし。Aのおかげ。」
ああ、また。
Aちゃんの名前が出てくる。
よくわからないけど、Aちゃんとミナミさんの間で一悶着あったみたいで。
私のときのように？
「今度一緒に、会お？」
「い、いややわ、そんなん。あの人の顔なんて、見たないし」
「…だよね。でもね、あの人、変わろうとしてて。」
「せやけど………」
「わかっとるやろ？あれ、旦那さんのトラウマだって」
「ショウは許したん？立花さんのこと、許したの？私やって知ってる、旦那さんの件は、可哀想やと思う、けどそんなの…、許せる理由にはならな…、
「許してないよ。ぜんぜん」
ぱたり、と、仕事がこなくなった。
どこに声をかけても、
君のデザインは使わないの一点張り。
それはすべて、立花さんが手回ししたことで。
理由は、ショウに近づいたから。
私は逃げた。この業界から。
許せるわけない、こんなの。
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◯◯(プロフ) - タイムマシンみたいなコメント欄です( ◠‿◠ ) (7月13日 1時) (
レス) id: de6e03f4bf (このIDを非表示/違反報告)
◯◯(プロフ) - 多分昔に2018年から年一ペースで読んでるとかいう書き込みをしたのですが、また読んじゃいました^_^大好きな作品です！！初めて読んだ頃からこんなに時間が経ってるのにびっくりするし、ここに書き込んでる人も大人になったのかなーって想像するだけでわくわくです^ ^ (7月13日 1時) (レス) id: de6e03f4bf (このIDを非表示/違反報告)
莉里(プロフ) - またいつか巡り合ったら読ませていただきます。確実に私のお気に入りの作品です。 (2022年6月25日 3時) (レス) id: fd324481c2 (このIDを非表示/違反報告)
莉里(プロフ) - たまたま検索していたところ、数年ぶりにこちらの作品を見つけました。懐かしな、何回も読み返したな、と思いながら読み始めると4時間ずっと読み続けてました。そして号泣していました。毎回です。こんな素敵な作品が残っていたこと、とても嬉しく思います。 (2022年6月25日 3時) (レス) @page37 id: fd324481c2 (このIDを非表示/違反報告)
ai(プロフ) - ほんと懐かしいな〜とコメント欄を眺めていたら、2017年の際にもしっかりコメントしている自分がいました（笑）この作品は中毒性がありますね。素敵な作品です。 (2021年9月29日 4時) (レス) id: a5a7435db3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆい☆
| 作成日時：2017年1月18日 12時
