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「……ていう話、…よくない?」
「なんやのそのお話、重すぎ〜」
「え」
「幼馴染どんだけ引っ張るん」
「しかもそれで終わり?その後なーんもないの?」
「その話かいた作者、そんなに辛いことあったんかな」
「Aさん、彼氏出来へんからそんな話ばっか読んどるんやで〜」
「な、生意気なガキ!」
「きゃー!Aさんが怒ったー!」
きゃーきゃーわーわーと、叫んで走り回る子供たちを追いかける。
捕まえて、デコピンを一発。
ああ、つかれる。
「ほらもう片付けて!お母さん待たせてまうで」
「はーい」
あれから2年経った。
私は卒業と同時に大阪の地元へ帰って来た。
今はそこで、子供向けの美術教室を経営してる。
もちろん私は絵だとか描けないわけで、美大生なんかをスカウトして、どちらも授業がない放課後に教えに来てもらって。
そんなに大きい教室じゃないし、
子供の数も私達の時よりますます減ってるみたいだから、なんとか経営してる感じだけど。
迎えに来たお母さん達の車に乗り込みながら私に手を振る子供たち。
それに振り返しながら、苦笑してしまう。
「さっきの実話なんやけど……」
重すぎとか、散々な言われよう。
まあ、わからんでもないけど。
今日の教室はもうこれで終わりで、大学生にもお疲れ様と声をかける。
ちょっとだけ事務を終わらせて帰ろうとして、受付のカウンターに見慣れない顔の親子連れが見えた。
「こんばんは」
「こんばんは…あの、絵の教室やって聞いて。この子初心者なんやけど…大丈夫ですか?」
「絵の勉強っていうよりは、楽しく絵を描こうっていうスタンスでやってるんです。全然大丈夫ですよ〜。よかったら体験とかされますか?」
この教室に通う殆どの子が小学生だけど、数人もっと歳上の子もいる。
今回来た子は高校生で、言うのもなんだけど背が高いイケメンくんだった。
基本、お母さんと私で話が進み、
とりあえず1度体験してみようということで話がついたとき、
それまで黙っていたイケメンくんが、遠慮がちに口を開けた。
「……美大行きたいんやけど…。それの勉強って、できますか?」
「…えっ、と」
「デザイナーになりたいんです」
イケメンくんと目が合う。
遠慮がちな言い方。
それでも意志の強い瞳。
______いつかの頃を、思い出す。
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◯◯(プロフ) - タイムマシンみたいなコメント欄です( ◠‿◠ ) (7月13日 1時) (レス) id: de6e03f4bf (このIDを非表示/違反報告)
◯◯(プロフ) - 多分昔に2018年から年一ペースで読んでるとかいう書き込みをしたのですが、また読んじゃいました^_^大好きな作品です!!初めて読んだ頃からこんなに時間が経ってるのにびっくりするし、ここに書き込んでる人も大人になったのかなーって想像するだけでわくわくです^ ^ (7月13日 1時) (レス) id: de6e03f4bf (このIDを非表示/違反報告)
莉里(プロフ) - またいつか巡り合ったら読ませていただきます。確実に私のお気に入りの作品です。 (2022年6月25日 3時) (レス) id: fd324481c2 (このIDを非表示/違反報告)
莉里(プロフ) - たまたま検索していたところ、数年ぶりにこちらの作品を見つけました。懐かしな、何回も読み返したな、と思いながら読み始めると4時間ずっと読み続けてました。そして号泣していました。毎回です。こんな素敵な作品が残っていたこと、とても嬉しく思います。 (2022年6月25日 3時) (レス) @page37 id: fd324481c2 (このIDを非表示/違反報告)
ai(プロフ) - ほんと懐かしいな〜とコメント欄を眺めていたら、2017年の際にもしっかりコメントしている自分がいました(笑)この作品は中毒性がありますね。素敵な作品です。 (2021年9月29日 4時) (レス) id: a5a7435db3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆい☆ | 作成日時:2017年1月18日 12時