☆158 ページ23
歩いて幾らかするうち、
お婆さんは廉の背中で寝てしまったようだった。
途切れる会話。
先を歩く私の後ろを、
少し間隔をあけて廉がついてくる。
「……なあ」
「はい！なんでしょう」
「さっきここ、通りませんでした？」
その通りだ。
私の記憶が正しければ、ここを通るのは3回目………
後ろからの視線を感じながら
地図をじっと眺める。
「おっかしいなぁ…絶対合ってるんだけどなぁ…」
「……」
「ここがこうで、これが…えっーと……」
ブツブツ呟いて、
無駄に考えてるアピールとかしてみる。
う。
なんで、こんな役割引き受けちゃったんだろう。
「やっぱり…」
「わかりました！こっちです！」
「またかよ！」
「え？」
「それさえもわかってねえ！おい地図見せろ」
「だ、大丈夫ですって。あってますから」
「なにが大丈夫だ、嘘つくなよ」
「嘘なんかついてません」
「地図読めねえのは昔からわかってんの、ああ任せた俺がバカだった」
「はー？！は、ちょ、…なにその言い方ー！！」
「事実でしょ、ほら見せて」
そう言ってグイッと距離を詰めて覗き込んできて、地図を見始めた。
なにこいつ〜…
まあ…地図読めないのは、事実…そう、紛れもない事実だけど…
廉はいつだって、正論だ。
言い方や態度は酷いけど、間違ってない。
………ん？
さっき、廉、なんていった？
……昔から………、って…
「俺の後ついてきてください」
「……」
「ちょっと、聞いてます？…ったく」
廉が歩き出した後を、
慌てて追いかける。
あれ？
廉、私のことわかってないんじゃないの？
けど今たしかに昔から、って言った。
わかってるの？
わかってないの？
ドクドク、また胸が鳴り出す。
恐怖、不安、期待、緊張。
いろんな感情が混ざり合って、目が回りそうになる。
そのうちに目的地に着いて、
目覚めたお婆さんから手厚くお礼をもらう。
林檎1つずつ。
私たちの手に乗せて、お婆さんはお孫さんのお家へと入っていった。
知らない土地。
隣には、廉。
どうするの、この状況。
「それにしても結構かかったな、うわもうこんな時間」
腕時計をみて、うわあって声あげてる。
「あの」
「ん？」
「一緒に帰るんですか？」
「…だって、道わからないんでしょ」
「…わかんないです」
「……根っから方向音痴だもんなあ、おまえ」
廉がくるりと背を向けた瞬間、
ふ、と微かに笑ったのがみえた。
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れー。 - トラウマになりそうなほどに切なく物語を思い出すだけで胸が締め付けられます。こんなに感情が動いた作品は今まで読んできた小説で圧倒的に一番です。映画やドラマにしてほしいほどこの小説に惹かれてしまいました。大好きな作品です！ (2018年6月27日 10時) (
レス) id: 4792958e4f (このIDを非表示/違反報告)
まお(プロフ) - 一番好きな作品です！！もう、10回ぐらいは読み返しました笑 定期的に見たくなります！ (2018年4月1日 0時) (レス) id: 7fb9479a8f (このIDを非表示/違反報告)
夏 - あー、頭がどうにも可笑しくなりそうです笑この作品を見ると、生まれた場所の東京と今居る田舎の県と、交わって感情移入がしやすいです。教えてくれたあの子に感謝。 (2017年1月21日 8時) (レス) id: ec0b94023c (このIDを非表示/違反報告)
むむ(プロフ) - この作品が占ﾂｸで一番好きです！いきものがかりさんのラストシーンにぴったりでこの曲をきくとこの作品を思い出してなきそうになります。お勉強頑張って下さい！ (2017年1月18日 20時) (レス) id: 092114e7d9 (このIDを非表示/違反報告)
なっぴぴ(プロフ) - 更新されててすごいびっくりしました！ほんとにうらつくの中で1番好きな作品です>_< (2017年1月18日 13時) (レス) id: d6fe05cabb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆい☆
| 作成日時：2015年12月29日 10時
