4:Procyon ページ5
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1限が終了してさっさとバイトに向かう。
小芭内は今日蜜璃さんとデートらしくて、いつもより機嫌が良かった。
「お疲れ様です!」
「おーお疲れ星奈ちゃん、今から?」
「はい。今日はラストですー」
「頑張るねぇ学生!」
店長が丁度休憩していたから、スタッフルームが蜂蜜とカフェラテの甘い匂いで充満していた。
エプロンに袖を通して鏡で自分の姿を最終確認してからルームを出る。
ここのカフェでバイトし始めて約2年。
高校受験の時は途中抜けたけど、籍だけは残したままにして貰えたから大学に合格してもう一度ここで働けている。
「_いらっしゃいませ!」
「……キャラメルスワークルのトールで」
「かしこまりました」
……来た!
毎週水曜日、私の出勤とほぼ同時ぐらいに来るこの男の人!
マスクと帽子で顔が分かんないけど、背も高くて物腰が柔らかだからこんな人が常連さんで毎週のこの日が最近楽しみになっている。
_それにこの人、こんなにお洒落でスマートな男の人なのに……。
「……今日、スコーンって…売り切れっスかァ」
「…只今お作りしてるのでもう少々お時間かかります」
「……そう、すか……」
極度の甘党………!!
こんな見た目して、超がつく程甘いもの好きぽい。
スコーンが今無いのを知って明らかに肩を落としている様子に笑いをこらえる。
「宜しければ、出来上がり次第お席までお持ちしましょうか?」
「……!」
そういうともう次には顔を上げて素早く2回頷く男の人。
可愛いなぁ。彼女さん、きっと幸せだろうなぁ。
…て、私は何を考えてるんだ。
「星奈ちゃーん、スコーンあがったよぅ」
「ありがとうございます!」
先輩からスコーンを頂くとふんわりとバターの香りが鼻をかすめて、全身が喜ぶ。
さっきのお客さんを探すと窓際の席で参考書を開いていた。
「お待たせしました」と声をかけると参考書から顔を上げる男の人。
真っ黒な瞳がやけに綺麗で、数秒だけ見つめ合ってしまった。
「ありがとうございます」
「どうぞ! 出来たてなので熱いですよ」
「…熱ちィ」
スワークルは減ってるのにマスクを着用している。
まだ10月なのに完全防備だなーこの人。
マスク外さないのかな? …どんな顔してるんだろ。
じっと見つめてたせいか、男の人が不思議そうに私を見た。
ど、どうしよう…!
ぱっと参考書に視線を移すと、私も同じのを使っていた。
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おそらまめ(プロフ) - kさん» k様、過去作品にもいくつか触れて頂いているようで、とても嬉しいです。天才だなんて恐れ多いお言葉です……でも嬉しいです。k様が読みたくなるような作品を今後も作っていければと思っております。ありがとうございます(^^) (6月16日 2時) (レス) id: bb8d3426f9 (このIDを非表示/違反報告)
k - まさかこの作品がおそらまめさんだったなんて、、、この作品もすごい素敵です!!!!おそらまめさんは天才ですか?? (6月15日 22時) (レス) @page50 id: 5d2f3eba17 (このIDを非表示/違反報告)
yukino(プロフ) - この作品もとても面白いです!!!! 実弥さん最高です!! こんな面白い作品を書けるなんて尊敬します!! (2022年1月17日 19時) (レス) id: b465ac1425 (このIDを非表示/違反報告)
おそらまめ(プロフ) - 美桜さん» 美桜様、ありがとうございます(^^)もう作者の実弥シリーズの作品だけでそれこそ短編集出せそうですよね(笑)そんな…嬉しい事を言って下さって…。懐かしいキャンパスライフの日々、思い出しますね…! (2020年11月27日 9時) (レス) id: 77433e9bba (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - ううう、こちらも名作!本出してください!即買します!何回も読み返して、キャンパスライフを思い出してます(^-^) (2020年11月26日 12時) (レス) id: a2ac9ececf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おそらまめ | 作成日時:2020年3月27日 0時