検索窓
今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:39,346 hit

其ノ肆拾捌 ページ5

Aside

「まぁ、落ち着いて下さいよ。」

紅茶を手で指し示しながら、形だけでも姐さんを落ち着ける。

まぁ、姐さんの内心が落ち着いていないことは判ってるけど……

時間もないし、さっさと話を進めるか。

「その子を、私の作戦に利用させて頂きました。」

「私への許諾も無しにか?」

「ええ。あぁ、安心して下さい。
命に関わるようなことはありません。
資料があるので、良ければご覧になりますか?」

「勿論じゃ。」

私は、伸びてきた姐さんの綺麗な手に、資料を優しく置く。

私と姐さんは、表面上は笑顔を保っていた。

しかし、その瞳の奥には、互いの思惑や本音を隠しており、お世辞にも好い雰囲気とは云えない。

肌を刺すような冷えきった空気にうんざりしていた私は、不意に視界に入った涙くんを見て癒されることになる。

涙くんは、空気が変わったことに気付きもせず、紅茶に角砂糖を一つと、たっぷりのミルクを入れていた。

本当に純粋で可愛いなぁ。

……姐さんにとっての鏡花ちゃんは、こういう存在なのだろうか?

ならば、本当に申し訳ないことをしてしまったかもしれない。

今まで部下がいなかったから判らなかったが、部下というのはこんなにも可愛いものなのか。

私の良心が少しだけ痛んだ。

だけど……この組織で生きる人間なんだから、そんな甘いことは云ってられないか。

「如何ですか、姐さん?」

「……流石、Aじゃな。
これならば確実に探偵社の連中を巻き込め、逃走経路も断つことが出来るじゃろう。
……じゃが、Aらしくないのぅ。
お主は、派手な作戦を好まぬじゃろう。」

……矢っ張り、姐さんは鋭いなぁ。

「まぁ、確かにそうですね。
気を引くために、大規模な事件を起こすことはありますが、あくまで本命はひっそりと……
というのが、私の殺り方です。
その方が、効率的ですからね。
ただ、最近考えたんですよ。
……大きなリスクを伴う作戦の方が、面白くありません?」

私を睨み付ける姐さんの目が、更に鋭くなった。

「そんなに怒らないで下さい。
別に、私の趣味嗜好のためだけじゃないですよ。
七十億という莫大な利益のためであり……
鏡花ちゃんのためでもあるんですから。」

姐さんが、訝しげな視線を私に向ける。

「如何いうことじゃ?」

私は、人差し指を唇に軽く押し当て、

「秘密です。」

と返しす。

姐さんは、暫く黙りこくった。

其ノ肆拾玖→←其ノ肆拾漆



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (49 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
169人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

舞花 ひめ(プロフ) - るぅとさん» 有難う御座います!そう云って頂けると私も頑張れます!これからも応援、宜しくお願い致します。 (2019年8月22日 7時) (レス) id: 6d7eb9b273 (このIDを非表示/違反報告)
るぅと(プロフ) - 更新お疲れ様です!! ご自分のペースでいいので頑張ってくださいっ (2019年8月18日 22時) (レス) id: 4ba8ceef5d (このIDを非表示/違反報告)
舞花 ひめ(プロフ) - いずなさん» 有難う御座います!楽しみにして下さってる皆様の為にも、引き続き頑張って行きますので、これからも宜しく御願い致します。 (2019年7月8日 6時) (レス) id: 052a536090 (このIDを非表示/違反報告)
いずな - この物語面白いです!忙しいと思いますが更新頑張ってください!続き楽しみに待っています (2019年7月6日 2時) (レス) id: f5ee51c946 (このIDを非表示/違反報告)
舞花 ひめ(プロフ) - ▼とあるヰ琉兎さん» 有難う御座います!更新頻度が落ちないよう努力していくので、これからも応援、宜しく御願い致します。 (2019年6月1日 18時) (レス) id: 90e19b9523 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:舞花 ひめ | 作成日時:2019年6月1日 8時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。