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Aに気を使わせないための発言だったのに、嬉しそうなジョセフが先に目に入ってしまう。
癪だったのでAを呼んでベンチの真ん中に座らせた。
大き目のベンチとはいえ、180cm超えの男が両端を陣取っているのでさすがに狭い。仗助の右足に彼女の足が触れている。
心臓が不自然にとくりと跳ねた。
けれど、呑気な状況に対する滑稽さに上塗りされ、仗助がはっきり認識する前にその感情も消えてしまった。
「良かったの仗助くん、買い物しなくて」
「まァほんとはカッピョイイスーツでも見て回りたかったけど、新作が出たわけでもねーしな。イイ服は逃げやしねーよ」
ちょっと臨時収入があったもんで、と横目で笑って見せる。
きょとんとした反応が返ってきたので、さらに顔がにやけそうになった。
あのとき酔っ払った甲斐があったと教えたら、彼女はどれだけ驚くだろうか。
芋づる式にあの日の出来事が思い出されて、別の意味で表情が崩れかける。
仗助は熱を散らすように視線を落とし、くっついたままの2人の足が見えたので急いで膝を離した。
「赤ちゃん用の雑貨なら、亀友じゃなくても専門店がありますし、そこに行ってみるのはどうですか?」
「あそこは嫌な思い出しかねーんだよなァ〜」
「何かあったのか?」
「あんたのせいだよ!俺の貯金すっからかんにされたの忘れてねェかんな!」
「おや、まだ返しておらんかったか」
「もう戻ってますゥ〜〜〜」
円とドルの換算があやふやなのだとジョセフは言うが、金銭感覚から違うんじゃないかと冷ややかに返した。
今日デパートに足を運んだのも、思いのほか滞在が長引きそうであり、長く使うならそれなりのものを用意すればいいとの承太郎の助言もあってのことだ。
単なる金持ちではなく、使い所を分かっているだけだと仗助も分かってはいるのだが。
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こうもり - あげなすびさん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2022年9月14日 7時) (レス) id: 9309100d6a (このIDを非表示/違反報告)
あげなすび(プロフ) - 面白いですっ...!!これからも応援します! (2022年9月14日 0時) (レス) @page3 id: a4623d5dd3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こうもり | 作成日時:2022年9月3日 22時