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夕方の百貨店はそれなりの賑わいで、帰宅時間を回ればもっと活気があふれそうだと想像がつく。

杜王町民なら通い慣れた店だろうに、Aは物珍しそうにフロアを見渡した。危うく人にぶつかりかけて、慌てて仗助の側に寄ってくる。

身を屈めてどうかしたのか尋ねれば、普段買い物は平日の日中に回すことが多いために新鮮なのだと返答があった。

「確かに取材し甲斐がありそう」と小さく呟いたのはおそらく露伴絡みのことだろう。
仗助にはどうでもいいことが、人避けとして頼られるのは悪くない気分だったので、そのまま先導するように歩く。


「で、どこ見に行くんスか。あんたもガタイ良いんだから、ぶつかんねーようにしろよな〜」
「そうじゃのぉ。この子のおくるみにガーゼのスカーフを…」


そのとき、ジョセフの近くにいた露伴がカメラのシャッターを切った。
一瞬辺りを眩しく照らしたフラッシュに瞬いたのはジョセフだけではなく…。


「ぅ、ふえっ」


さっきまで大人しく抱かれていた赤ん坊が、光に驚いてぐずり出した。
大きなサングラスでよく見えないが、どんどん機嫌が傾いているのが仗助にも分かった。


「ま、まずいぞ、このままではどんどん透明に…!」
「急げ、とにかく外に出んぞ!」


すでに赤ん坊だけでなくジョセフの両腕まで消えている。仗助は人混みをかき分けてジョセフを外へ連れ出した。

だいぶ乱暴になってしまったが、見知らぬ人まで透明にするよりずっといい。


エントランスを抜けて建物の影に回ると、腰の曲がった父親を振り返る。足腰の心配もしてやりたいが、まずは無差別透明化マシンと化した赤ん坊をどうにかする方が先だ。

人集りを抜けたことで少しは落ち着いてくれることを期待したが、ジョセフがあやしても泣き声は止んでくれない。


「ああもう、早いとこ落ち着いてくんねっスかね…!」


一人っ子の仗助は幼い子供の扱い方なんてさっぱりだ。

透明化がジョセフの肘まで広がった。
このままでは亀友の玄関口が忽然と消えたとして明日の新聞の一面を飾りかねない。


「あのっ、ちょっと荒っぽくはなるんですけど、痛くないので許してください!」


そのとき、一緒になって飛び出していたAが突然声を上げた。彼女が差し出した右手にレイヴィング・ナイトの影が重なる。次いで、そのどちらも透き通って見えなくなった。
赤ん坊に触れたのだと理解したときには、彼女の泣き声は寝息に変わっていた。

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こうもり - あげなすびさん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2022年9月14日 7時) (レス) id: 9309100d6a (このIDを非表示/違反報告)
あげなすび(プロフ) - 面白いですっ...!!これからも応援します! (2022年9月14日 0時) (レス) @page3 id: a4623d5dd3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:こうもり | 作成日時:2022年9月3日 22時

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