検索窓
今日:12 hit、昨日:53 hit、合計:57,408 hit

39 ページ39

酔っ払いの体温が高いのは分かっている。けれど、どうしてか今更それを強く意識した。


「じょ……仗助くん」
「グレート!」


彼がご機嫌に笑う気配がした。
満足したのか、それ以上何か喋ることもない。


親がいない。熱い体温。名前で呼ばれると喜ぶ男の子。
頭の中でそれだけがぐるぐる回る。
物音のしない空間はそれを助長させるばかりだ。

落ち着くはずの静寂が、今は酷く恨めしかった。


(レイヴィング・ナイト!何でもいいからどうにかして!)






仗助の意識が覚醒したのは、それからもう間もなくのことだった。


がばっと前触れもなく体を起こした彼は、「普通に動けるッ!!」と主張の激しい報告をしてくれた。


呼吸を半分止めかかっていたこともあり、顔を背けてしまうのは許してほしい。

壁の模様を見つめるAは、仗助も頑なに背を向けたままなことに気付いていない。


「時間かかってごめんね」
「…謝んなよ、俺は助かってんだぜ。けど、コントロールすんのってそんな難しいのか」
「ううん。私の思い切りが足りなかっただけだと思う」


下手に眠らせないようにとか、失敗したらどうしようとか慎重になりすぎていたのが原因だろう。
元に、早くなんとかしたいと気合を入れたらすぐに効果が現れた。


2人がようやく目を合わせたのは、そんなやりとりをした後だ。


「顔の火照ってる感じももうすぐ引くと思うよ。でも、今日はちゃんと休んでね。感じてないだけで体はしっかり酔っ払ったままだから」
「任せとけって」
「遅くまでゲームとかしたら駄目だよ」
「…夜更かしはしねーっス」


康一や億泰、そして彼自身からも聞いていた趣味。生活リズムを崩すようなことは滅多に無いらしいが、注意せずにはいられなかった。


そろそろ帰ると言う彼を見送るために玄関まで向かう。
びっくりするほど体が重い。気疲れしたせいだろうが、スタンドを使ったせいだと自分に言い聞かせる。


「…あー、その、A」


ドアノブに手をかけた仗助が、歯切れ悪く話しかけてくる。
ぎこちなく振り返った彼は、気まずそうに視線を彷徨わせた。


「俺、変なこと言った、よな…?」


覚えてねーわけじゃねーんだけど、割とあやふやっつーか、俺マジに酔ってたから、ととりとめもない言葉が続く。


いつも目を合わせられないのはAなのに。
立場が逆転しているのがなんだかおかしくて、今日はAの方から視線を絡ませた。

40→←38



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (71 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
161人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

こうもり - あげなすびさん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2022年9月14日 7時) (レス) id: 9309100d6a (このIDを非表示/違反報告)
あげなすび(プロフ) - 面白いですっ...!!これからも応援します! (2022年9月14日 0時) (レス) @page3 id: a4623d5dd3 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:こうもり | 作成日時:2022年9月3日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。