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酔っ払いの体温が高いのは分かっている。けれど、どうしてか今更それを強く意識した。
「じょ……仗助くん」
「グレート!」
彼がご機嫌に笑う気配がした。
満足したのか、それ以上何か喋ることもない。
親がいない。熱い体温。名前で呼ばれると喜ぶ男の子。
頭の中でそれだけがぐるぐる回る。
物音のしない空間はそれを助長させるばかりだ。
落ち着くはずの静寂が、今は酷く恨めしかった。
(レイヴィング・ナイト!何でもいいからどうにかして!)
仗助の意識が覚醒したのは、それからもう間もなくのことだった。
がばっと前触れもなく体を起こした彼は、「普通に動けるッ!!」と主張の激しい報告をしてくれた。
呼吸を半分止めかかっていたこともあり、顔を背けてしまうのは許してほしい。
壁の模様を見つめるAは、仗助も頑なに背を向けたままなことに気付いていない。
「時間かかってごめんね」
「…謝んなよ、俺は助かってんだぜ。けど、コントロールすんのってそんな難しいのか」
「ううん。私の思い切りが足りなかっただけだと思う」
下手に眠らせないようにとか、失敗したらどうしようとか慎重になりすぎていたのが原因だろう。
元に、早くなんとかしたいと気合を入れたらすぐに効果が現れた。
2人がようやく目を合わせたのは、そんなやりとりをした後だ。
「顔の火照ってる感じももうすぐ引くと思うよ。でも、今日はちゃんと休んでね。感じてないだけで体はしっかり酔っ払ったままだから」
「任せとけって」
「遅くまでゲームとかしたら駄目だよ」
「…夜更かしはしねーっス」
康一や億泰、そして彼自身からも聞いていた趣味。生活リズムを崩すようなことは滅多に無いらしいが、注意せずにはいられなかった。
そろそろ帰ると言う彼を見送るために玄関まで向かう。
びっくりするほど体が重い。気疲れしたせいだろうが、スタンドを使ったせいだと自分に言い聞かせる。
「…あー、その、A」
ドアノブに手をかけた仗助が、歯切れ悪く話しかけてくる。
ぎこちなく振り返った彼は、気まずそうに視線を彷徨わせた。
「俺、変なこと言った、よな…?」
覚えてねーわけじゃねーんだけど、割とあやふやっつーか、俺マジに酔ってたから、ととりとめもない言葉が続く。
いつも目を合わせられないのはAなのに。
立場が逆転しているのがなんだかおかしくて、今日はAの方から視線を絡ませた。
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こうもり - あげなすびさん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2022年9月14日 7時) (レス) id: 9309100d6a (このIDを非表示/違反報告)
あげなすび(プロフ) - 面白いですっ...!!これからも応援します! (2022年9月14日 0時) (レス) @page3 id: a4623d5dd3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こうもり | 作成日時:2022年9月3日 22時