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昼休みぶりだねと仗助を見上げるAには手を振り返したいところだが、まずは何食わぬ顔で笑っている彼に一言言わねばならない。
「どこで油売ってんスか!!誘った方から別行動すんじゃあねーーッ!!」
「う、うむ。すまんかったのォ……この子がこっちに行きたがってるように見えて、つい……」
しょんぼり方を落とすジョセフの横でAがびくっと肩を震わせた。
しまった、彼女に怒号を聞かせたかったわけではない。
「相手してもらって悪ィな。この人、足止めしててくれたんだろ」
「何か困ってるみたいに見えたから、少しお話ししてただけで……ところで東方くん、お知り合いなの…?」
仗助は僅かに言葉に詰まった。
俯いたジョセフが、さっきとは別の影のある表情を浮かべている。
別に隠したい理由はない。
ただ、誰彼構わず教えてやる義理もないと思っているのは事実だ。
周りの大人が遠巻きに何か囁くのも、子供が自分の家庭との違いを心なく指摘するのも、昔から慣れている。
仗助の体が大人に近づいていくにつれてそういった空気は薄れていったが、変に気を使われるのが好きではないことに変わりはない。
親戚だと濁すこともできる。
でも、彼女には話してもいいと思った。
「…この人、ジョセフ・ジョースターっつうんだけど、…俺の親父。アメリカから来てて、今は承太郎さんとホテルに滞在してんだ」
ジョセフがパッと顔を上げた。
赤ん坊が帽子の端をぎゅうぎゅう引っ張っているのも構わず、色素の薄くなった目を丸くして仗助を見上げている。
平坦な声で告げた仗助は、Aの返答を待った。
Aは驚いたようにジョセフと仗助を見比べた。
けれどそれも僅かな間だけで、次の瞬間には穏やかな笑みを浮かべていた。
「そうなんだ。それで日本語お上手なんですね。言われてみれば、お顔も似てるかも」
「そ、そうかい?どのあたりが似とるかな」
「一番は目ですかね。少し垂れ目で、かっこいいのに優しい感じが」
「よかったのぉ仗助くん。わしらかっこいいんじゃって」
「…ッ、調子に乗ってんなよ!」
ほわほわと花を飛ばすジョセフに、つい語気が荒くなった。
なんだか心拍のリズムがおかしい。
「そうかそうか、君は仗助くんのお友達じゃったか」
「はい。東方…えっと、仗助くんと同じ学年の、天崎Aといいます」
整うどころかますます脈が乱れていくような気がして、仗助は思わず明後日の方向に目を逸らした。
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こうもり - あげなすびさん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2022年9月14日 7時) (レス) id: 9309100d6a (このIDを非表示/違反報告)
あげなすび(プロフ) - 面白いですっ...!!これからも応援します! (2022年9月14日 0時) (レス) @page3 id: a4623d5dd3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こうもり | 作成日時:2022年9月3日 22時