【ジョジョ4部】蠱惑的インクルージョン (ページ19)

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すいていた図書室には、熱心に調べ物をしていた男子がいた。
小声で呟いている内容からして、一つずれた棚を探しているようだったので、該当の本棚を教えてあげたのだ。ほんの一言、交わしただけ。

『困ってるみたいだったから、声をかけただけで…』
『薄汚い下心が透けて見えてんのよ！康一くんを汚さないで！！』
『じゃあ、次はあなたが教えてあげて…？』
『…は？』
『何度か来てるけどまだここの図書室に慣れないって、言ってたの。きっとまた同じ時間帯に行けば会えるんじゃあないかな』

体を縛られるような感覚がするんと消えた途端、ひどく咳き込んでしまった。まるで首でも締められていたみたいだった。

目を丸くする彼女から、怒りのエネルギーが散っていくのが分かった。

『会えるの…？康一くんに？』
『あの人が時間割に合わせて定期的に来てるなら、だけど』
『そッ、それでいいのよ！！あんたはすっ込んでなさい！！』
『ごめんなさい。あなたがあの人を好きだって、知らなくて』

そう言うと彼女はパッと顔を赤らめて、走ってどこかへ行ってしまった。

「次の日から、いつどこですれ違えるか分かったとか、今日も素敵だったとか、報告してくれるようになって。それから話すようになったの」

そういえば、広瀬くんとは一度話したことあったんだね、と締めくくれば、3人は揃って複雑な顔をしていた。

「…つまりよぉ、Aは康一のこと由花子にチクったっつーことか？」
「人聞き悪いよ億泰くん！！というか由花子さん、そんな前から……」
「よく切り抜けられたもんだぜ。Aお前、意外に肝座ってんだな」
「あのときは単に頭が回ってなかったんだと思うの。ああ言う以外に思いつかなかったから。もしかしたら本当に首が絞まってて、酸欠になってたりして」
「おー、その通りだぜ。由花子もスタンド使いで、髪の毛を操れるんだよ」
「え」

億泰がさらっと言うので、Aは思わず箸を動かしていた手を止めた。

美人が怒り狂う迫力に押されたのだと思っていたが、本当に首は絞まっていたらしい。

慣れるまで由花子には毎日びくびくしていたことを考えると、言葉のやりとりができていたのも異常だ。酸欠の線も間違いなさそうである。