甘え下手(shintaro.m) ページ7
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繁忙期ってやつ。月末まではずっとこの調子だよ、って違う部署の先輩に哀れまれた。いつも以上に職場はぴりぴりしてるし、どんどんと回ってくる仕事に私自身も疲弊していく。
「慎ちゃん、ただいま」
「おかえりー、…疲れてんね。大丈夫？」
「え、うん。大丈夫だよ。お風呂掃除しちゃうね」
「俺、代わろっか？Aの顔すげー疲れてるよ」
「んーん。慎ちゃんご飯作ってくれたでしょ？この位やる！」
「…わかった。飯あっためとくから着替えたらすぐ来なよ。風呂なんて俺洗っちゃうし」
「ありがと、慎ちゃん」
パタパタとキッチンにかけていく慎ちゃんをぼーっと見送ってしまった。…着替えて、お風呂掃除もしちゃわないと。
脱衣所で部屋着に着替えて、それから直ぐにお風呂掃除を始めた。手に持った洗剤の中は空で、昨日の自分を少しだけ恨んでしまう。変えておけばよかったのに。
「…微妙に届かないんだよね、」
洗面台の収納スペース、ストックをしっかり揃えておく慎ちゃんのおかげで上の収納棚まで使っている。確か、お風呂の洗剤はあの上だ。
ぐーっと背伸びしても届かない、慎ちゃん、…ご飯の準備をするのに呼ぶのも申し訳ないよね。
洗面台に手をかけて…行儀悪いけど膝立ちしちゃえ。
届いた、って思った瞬間。ぐらつく視界、掴んでいた洗剤と一緒に床に尻もちをついてしまった。痛い、よりもその音と落ちたことにびっくりして。しばらく座り込んでいたと思う。
「A？…え、どしたの。」
「あ、洗剤とろうとして。…落ちちゃった」
ばかだねー、って笑って終わるつもりだったのに。慎ちゃんは「大丈夫？どっか痛いとこない？」って手を引いて立たせてくれる。
「大袈裟だよ、大丈夫！」
「俺、やるっていったじゃん。」
「…私の番だもん。お風呂掃除」
「わかりやすいくらい疲れた顔してんだからさ、大人しく甘えとけばいいじゃん」
「…大丈夫、だもん」
「あのさ、それでこんな風に転んで怪我される方がやなんだけど。」
それもわかんない？
呆れたように言われて、自分が悪いのに苛立ってしまう。それでも言い返す立場じゃない、ってことは理解してた。慎ちゃんは、心配してくれてるんだからって。
「ごめんなさい、」
「ごめんじゃなくて。…きついなら俺やるよ、って言ったじゃん」
「できるから、大丈夫って思って」
「あのさ、A」
「……ごめん」
「謝って欲しいんじゃなくてさ、あー。もう」
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作者名：まめこ
| 作成日時：2022年9月17日 0時
