再々補習(hokuto.m) ページ3
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勉強なんて大嫌いだ。将来の選択肢が広がる、なんて至極当たり前の正論を言われてもなかなかそれは変わらない。今だって一人取り残された再々補修、という名のプリントとむきあっている。…これが、どんな風に私の将来の役に立つのさ。
「意味わかんない」
独り言は教室の静寂に溶け込んだ。いつもは呆れた顔して付き合ってくれる北斗も委員会でいないし。…数学ができる人は頭の構造が違うんだ、絶対。
ぐりぐりと丸を黒く塗りつぶして机に突っ伏した。頭が悪い、私が悪い。あと態度も悪い、たぶん。
「…なにしてんのよ」
「ほくと！ねー！もうわかんない！帰りたい」
「帰りたいならそれやるの。ほら」
「だって意味わかんない。ほくと答え教えて？」
机から見上げた北斗は眉間に皺を寄せたあと大きなため息をついて前の席に座った。
「答えはだめ。…一緒にやるよ」
「えー。…早く一緒に帰りたくない？」
「そんな顔してもだめ。Aの為にならないし。」
「…あたまかた」
「かたくていいから。ペン持って」
さっき机に放り投げたペンをもたせられて、視線でプレッシャーをかけられてる。…たまには甘やかしてくれたっていいのに。
「ね、これもわかんない」
「…さっきの応用。この数式当てはめて」
「………んー？」
「ほら。これ、」
「……できてる？」
「うん。できてる。賢い」
ひとつひとつ、それこそ何度も同じようなことを聞いているのに嫌な顔ひとつしない。1問できただけで、柔らかく笑って褒めてくれる。…賢い、なんて言われたことない。
今だって、教えて貰ってるくせに伏せられた睫毛が長いな、とか。指が綺麗だな、とか。そんなことばかり考えている馬鹿な私なのに。
「…ほくー」
「なに？」
「睫毛長くて綺麗」
「…それはどーも。」
「指も長いね、細いし、なんなの？」
「褒めてんのか貶してるのかどちらかにしたら？あ、そこ惜しい。ここはさ、」
わざと脱線させたのに、戻された。見慣れたペンを動かして、私のために時間を使わせてる。…うん、なんがすごく申し訳ない。
「……ほく、」
「はいはい。どこがわかんないの？」
「ほくってなんで私と付き合ってるの？」
ぽとん、と北斗の手からペンが落ちる。…珍しいあほ面ってやつ。そんなに驚くことを聞いたつもりじゃないよ。
「…プリントをやったら？」
「あー。お情けだ。馬鹿な私を振りたくても振れないんだ。」
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作者名：まめこ
| 作成日時：2022年9月17日 0時
