【実.況.者】その恋心は買取不可です【uszw】

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「あれ、うっしーじゃん」
「えっ、レトルト」
『あら、香坂さん』



3人の声がテンポよく続いた。

どうやら先程ご来店したお客さんと、たった今ご来店された香坂さんはお知り合いのようだ。
でもレトルトって何…？？


私は、レトルトと呼ばれた男性に、もう一度視線を向ける。
やはりそこにいるのは、うちの店によく来てくださる常連の香坂さんだ。

珍しいあだ名なんだなぁ…？

そんなことを考えていたら、香坂さんと視線がバッチリ合ってしまった。



「すみません。今日は買取を…」
『あっ、かしこまりました』



どこかバツの悪そうな香坂さんから紙袋を受け取り、中身を確認する。


彼とは、初めこそマニュアル程度の会話しか話さなかったが、年末頃に来年の初売り福袋について問い合わせがあったことをきっかけに、次第に話すようになった。


私が紙袋の中身を確認している間、どうやらうっしーと呼ばれた彼は香坂さんを待つそうで、店内をうろついている。
仲良しだなぁ。


香坂さんから受け取った紙袋の中身は、数年前に発売された家庭用ゲーム機の専用ソフトだった。

全てで5つ…思ったより数が多い。



『すみません香坂さん。査定時間なんですが、30分程度頂いても大丈夫ですか？』
「あぁ。はい。大丈夫です」
『査定が終わり次第、ご連絡します』



香坂さんは私に「お願いします」と軽く会釈をすると、うっしーさんに声をかけ、2人で1度店を後にした。

レジ付近の椅子に座り、店内に流していたFMラジオの音量をあげる。

心地よいラジオパーソナリティの女性の声が店内に響いた。



【それでは聴いてください。ポルカドットスティングレイでフレミング】



あっ、私の好きな曲だ。
私はお客さんが居ないことをいい事に、店内に流れる少しローテンポの曲に合わせて、ご機嫌に鼻歌を歌う。


この時間、めちゃくちゃ好きなんだよね。

香坂さんから預かったゲームソフトにそっと触れ、祖父の遺した買取基準と照らし合わせながら、市場価格と私の経験も含めて買取金額を査定する。

幼い頃から祖父の査定を傍で見ていた私は、数年前に本格的に祖父から教えてもらい、今こうしてここで働いている。
何かと口の悪いことで有名だった祖父だが、その目利きは間違いなく本物だったと私は思う。

30分程で5つの査定が終了し、私は香坂さんの携帯電話に連絡をした。

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