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周りの大人はいつだって見て見ぬふりだった。

助けてくれる大人なんて一人もいなくて、いつも1人でじっと耐えるしか無かった。

痛くて、苦しくて、辛くて、悲しくて。

それでも、歯を食いしばって耐えて、仕方ないんだと諦めて。

どんな痛みも。

一生これが続いていくのだと。

子どもの私には選択肢なんて存在しなかったのだ。


中学に上がって初めて出来た友達。

初めて家族の話をした。

きっと気味悪がられると思ったとに、2人はもう大丈夫だと言ってくれた。

もう1人じゃないから、辛かったら頼ってと。

初めて私は心の底の本音を漏らした。





医務室に来てからかなり時間がたった。

ベックマンはあれから1度もタバコを吸っていなかった。

ホンゴウに言われたからだろう。




「…………そう言ぁ……嬢ちゃん名前は?」





薬の調合などをしていたホンゴウはふと振り返るとそう聞いてきた。

私もそう言えば名前を名乗っていなかったとここで気づいた。




「…………つむぎ。」

「俺はホンゴウだ。この船の船医をやってる。こっちが副船長のベン・ベックマン。」




ホンゴウは何となくそうなのかと思っていたが、ベックマンが副船長だと言うのは少し驚いた。





「何かあれば俺かベックマンを頼れ。他の奴らにはよく言っとくが、念の為だ。」

「………………うん。」




ありがとう、そう言おうとした時だった。

少し遠くの方からフラフラとこちらに歩いてくる足音が聞こえた。

ホンゴウもベックマンも多分聞こえていないが、耳がいい私には恐怖でしか無かった。

椅子から立ち上がりどうしようか迷った。

入口近くにいるホンゴウに隠れても近すぎる。

だから咄嗟にベックマンの後ろに身を隠した。


身を隠した瞬間誰かが医務室に入ってきた。






「あぁ……頭痛ェ………………」

「………………マジかよ……」






頭を抱える男を無視してベックマンの方、正確にはベックマンの後ろに隠れたつむぎに目をやったホンゴウ。

流石のベックマンも驚いていた。





「なんだよ?」

「…………な、なんでもねぇ……」






机にフッ潰す男をよそにベックマンはちらっとつむぎの方を見た。

完全に小さくなって怯えている。

ホンゴウは慣れた手つきで男に二日酔いの薬を渡していた。



「程々にしろって何度言ったら分かるんだ頭?」

「仕方ねぇだろ。」



そんな悠長な会話につむぎは気が気じゃなかった。

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作者名:こゆん | 作成日時:2022年9月2日 19時

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