… ページ26
ふと目が覚め重たい瞼を持ち上げた。
窓から入る月明かりで室内がうっすら照らされている。
首だけを動かして目を向けた方には椅子に座って腕を組んで眠ってしまったであろうシャンクスの姿が見えた。
シャンクスがいる安心感と嬉しさで手を伸ばすが、起こすと悪いと思い手を引っ込めた。
しばらくシャンクスを見つめていたが起きる気配もなく、目を閉じても眠れる気配もないつむぎはゆっくりとベッドから起き上がった。
窓から見える大きな月を見てそっとベッドから降りた。
音をたてないようにそっと部屋から抜け出す。
甲板に出ると月明かりと海風が気持ちよかった。
いつもの船首の先の方まで来るといっそう月が大きく感じた。
あの日と変わらぬ海の暗さは少し怖い。
しばらく空を眺めていると慌てたような足音が聞こえた。
ハッとして振り返り船室へのドアを見ると慌てたシャンクスが駆け寄ってきていた。
｢っ！ここにいたのかっ！……はぁ…………いなくなったら驚くだろう。｣
｢……シャン…………クス…｣
声を出すのが怖かった。
また冷たくされるんじゃないか、今度こそ嫌われるんじゃないか、そんな事ばかり考えてしまう。
しかし、シャンクスは自分のマントで私の身体を包んで抱き寄せた。
しっかりと抱き寄せられ身動きが取れないでいると、シャンクスの安堵の息が聞こえた。
いつものシャンクスの匂い。
ちらっと上を向くと、初めてここで夜の海を眺めた時と同じ顔をしたシャンクスがいた。
｢熱が下がったばかりなんだ。あまり無理をするな。｣
｢ん……ごめんなさい…｣
顔をうずめて抱きつくつむぎにシャンクスもホッとした。
どれだけの時間そうしていたかは分からない。
｢……なぁつむぎ。俺たちは海賊だ。危ない事もたくさんある。…それに、今はいいかもしれないが、つむぎが、成人する頃には俺も42だ。｣
｢………っ………………｣
少し悲しそうなつむぎの顔。
そんな事は関係ないと言うような顔でつむぎはまっすぐにシャンクスの目を見ている。
｢………後になって手放してはやれないぞ？｣
｢…っ！｣
｢ははっ…………つむぎ、もう二度と離さない…傍にいてくれ。｣
｢っ………うんっ…、｣
泣きそうな顔で笑うつむぎは本当に嬉しそうで、この笑顔を守っていきたいと、そう心に誓った。
｢……………ありがとう。｣
そう言ってそっとつむぎの額に口付けを落とした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 189人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こゆん | 作成日時：2022年9月2日 19時
