1-1【大海原】 ページ1
ふと目が覚めたのは外もまだ暗い時間帯だった。
部屋に唯一ある小さな小窓から、小さな光が差し込んでいる。
目を擦って起き上がり小窓の外を覗けば、小さな星が無数散らばっている。
ホンゴウが用意してくれたこの部屋。
ベッド以外は何も無く殺風景ではあるが、綺麗に掃除もされ埃り1つなかった。
思えば、ここに来て最初から気を使ってくれていて、気がつけば過去を打ち明けていた。
私にはここはすごく暖かくて、好きな場所になった。
私がいるのは海のど真ん中。
何故ここにいるのかは自分でも分からない。
知っているのはここが海のど真ん中で、この船は海賊船だと言うこと。
2日前、私は友人2人と一緒に家に帰る途中だった。
帰り道を歩いているところまでは覚えている。
たわいもない話をして、家族の話や勉強の話、それこそいつもと変わらない日常のはずだったのだ。
なにの、目が覚めた時私は大勢の男に囲まれ、そのどれもが今まで生きてきて向けられたことの無い視線だった。
状況を理解しようと周りを見渡しても、見えるのは男達。
しかし、よく見るとその男たちの後ろには太陽の光が反射してキラキラと輝く水面。
ここは、海のど真ん中だとすぐに分かった。
それでもここが何処なのか、なぜこんな所にいるのか、この船はいったいなんなのか、疑問は尽きることは無かった。
持っているのはショルダーバッグ。
しかし私は靴を履いていなかった。
なんとも変な格好。
「……何者だ。」
ふいに聞こえた低い声。
威圧感のある声は、私の身体を硬直させる事など考えるまでもない。
ここでやっと出てきた怖いと言う感情。
一際威圧感を放つ大きな男。
タバコを加えオールバックの銀髪が特徴的だ。
何者だと言われても、答えは見つからない。
どうしてここにいるのかも、どうやってここに来たのかも、私には1つも分からなかった。
そして、肌を刺すような威圧感で息をするのもやっとだった。
男の質問に、私は声が出なかった。
「こいつ、気がついたらここで倒れてたんだよな。」
「どうやってこの海のど真ん中で船に乗れたんだよ?」
口々に疑問を飛ばしてくる男たちに、少しだけ状況が飲み込めた。
しかし、肝心のどうやってかは誰にも分からないようだった。
困ったように頭を搔く銀髪のオールバック。
「あんた、どっから来た。」
日本、そう言おうとしたのに私の口から出るのは掠れた息だけだった。
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作者名:こゆん | 作成日時:2022年9月2日 19時