▽彰吾 ページ37
寝室の窓が割れる音。
次に、ガラスの破片が靴で踏まれる嫌な音がした。
ベッドに何者かが近づいてくる。
誰…?
慌てて飛び起き、電気をつけた。
『我が愛しき姫。』
「彰吾さん…!?」
『やっと会えたな。』
何でここに?
こんな夜中に?
何しに来たの…?
彼は混乱する私を鼻で笑った。
『行くぞ。』
「ど、何処に!」
『俺の国じゃ。』
連れ戻しにきたってこと…っ?
嫌だ。
「放してください。」
引っ張られた腕を引き戻す。
「私の答えは決まってます!彰吾さんじゃないってこと。」
逃げ出したときに、私の気持ちは分かったはずでしょ?!
あのときは色々混乱してたけど…。
『前にも言ったが、俺は欲しいものは力ずくでも手に入れる。』
「っ痛い!折れる!」
あまりにも強い力のせいで骨が軋む。
「っ!ちょっと!!」
ひょいと抱えられて簡単にお城から連れ出されてしまう。
警備の者たちは一人残らず倒れていた。
「みんな…。」
『全員トドメはさしとらんよ。』
「でもこんなやり方酷いです!きゃぁっ?!」
腕に注射をされた。
『悪いが暫く眠ってくれ。』
「彰吾さんなんか大嫌いです!最低っ!」
『それでも、俺はAが好きじゃ。』
あぁもう。
大嫌いだけど…そんな寂しそうな顔は、見たくなかった。
こんなときに好きだなんて言わないでよ…。
薄れていく意識の中、その表情が脳裏にこびりついて消えず苦しい思いをした。
目を覚ました頃にはすでに知らない場所へ閉じ込められた状態で。
『起きたか。』
「…。」
怖いよ。
普通じゃない。
『また逃げられんように、こうするしかなかったんじゃ。』
「こんな愛し方間違ってます!」
彰吾さんは私を抱き締める。
『どーすりゃ俺を愛してくれる?』
「ひっ!」
首を掴み床に押し付けられた。
私をじっと見下ろす目が恐ろしい。
『愛し方か…。』
いきなり唇が被せられた。
「〜ッ?!」
え、なっ!
キスした?!!
『Aを感じたくても感覚が無いんじゃどうしようもねーよなぁ。』
アンデッドだから、だよね。
考え込んだ様子だった彼が提案する。
『まぁものは試しじゃ。』
「?!」
『シてみよーか。』
「…もう彰吾さんの好きにしてください。」
私の負けだ。
好いてくれる気持ちを、信じるしかないと思った。
END.
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作者名:If | 作成日時:2022年8月7日 8時