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上品過ぎず、庶民的過ぎず…。
居心地が良い。
そんなお店に二人でやって来た。
「美味しい!」
『よかった。Aさんは吸血だけが食事って訳じゃないんですね。』
「はい。ご飯も普通に食べますよ。」
でも…、
「血液でないと補えない部分も多いんですけどね。」
『僕の血がAさんのお口に合うかどうか…。』
「ふふ。楽しみです。」
グラスに注がれたワインを口にする。
これも美味しくてニマニマした。
『そろそろ出ましょうか。』
「はい!ごちそうさまでした。」
たくさんの星が浮かぶ空の下。
散歩することに。
ロマンチックだ。
「海青さんは、その…。」
人間じゃないですよね?とは聞きづらいな。
『あ、僕ですか?』
小さく頷く。
『ライオンに姿を変えられます!』
「なるほど。」
普通に明るく教えてくれた。
別に気を使わなくても良かったのかも。
ライオンか…。
サーカスの司会役もしながら、ライオンとして芸もしていたんだ。
「かっこいいですね。」
『…っ、ありがとうございます。』
にこっと微笑むと海青さんは照れていた。
ふいに手を繋がれて小さい教会に入る。
今は誰もいないみたいで、シンとしている。
神聖な空気が漂う。
『僕の血、飲んで欲しいです。』
「はい。」
長椅子へ座った海青さんの正面に立って、繋いだままの手を口元へ寄せた。
「良い香り…。いただきます。」
出来るだけ優しく手の甲を爪で引っ掻いた。
唇をくっ付けてから少し離して、血を舐め取る。
『…!』
「はぁ…、美味しいっ。」
両手で海青さんの手を握って血が流れ出るのを待つ。
そしてまた舐める。
傷口へ下品に舌を擦り付けたい気持ちを抑える。
欲しい。
そういえば昨日は血を吸ってないからか。
これでは足りない。
「もっとください。」
『はい…、どうぞ。』
大胆に、海青さんの脚へ跨がる。
長椅子の上で両膝立ちした。
シャツのボタンを外す。
首に抱きつく。
背中に回された腕で安心感がうまれた。
あぁ…。
幸せ。
鋭い牙で皮膚を刺す。
「ッん…、」
ちょっと止められそうにない。
危険な自分を、垣間見た。
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作者名:If | 作成日時:2022年8月7日 8時