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健太さんが連れてきてくれた街は、温泉が有名なところ。
貸し切りの露天風呂に案内された。
昨日はお風呂に入れなかったから嬉しい。
お昼前から温泉っていうのもすごく贅沢だし。
静かにお湯へ浸かった。
「ハーブのいい香り。」
すごく落ち着く空間。
身体の疲れが和らいでいく。
健太さんといるとすごく頼りになるし…良いなぁ。
こうやってお互い一人になる時間を作ってくれるのもありがたい。
「良いお湯だった。癒されたな〜!」
温泉から上がると、新しいドレスが数十着用意されていた。
それらに合う靴も…。
小さなメモ書きを手に取る。
お好きなものを選んで下さい…かぁ。
至れり尽くせりだ。
「お待たせしました。」
『…、』
「健太さん?」
私を見て固まる健太さん。
…?
『髪、意外と長かったんですね。可愛くて思わず見とれてしまいました。』
「!」
さっきまでアップヘアだったから、印象が変わったのか。
素直に可愛いって言われると…照れるな。
「そうやって言葉にしてくださるの嬉しいです。」
植物園をゆっくりと散歩しながら健太さんとお話ししている。
『Aさんはあと3人の王子に会う予定です。』
「あと、3人…。」
『出来れば、』
きゅっと手を握られた。
『僕を選んでほしいな。』
ちょっと切ない瞳で私を見つめてくる健太さん。
今はまだ答えは出せないけれど…。
健太さんとの幸せな将来を想像すると、明るい気持ちになる。
「はい…。ありがとうございます。」
『次の王子の国までは僕がご案内しますよ。』
ここまでに私に尽くしてくれた王子は他にいなかった…。
私を案内してくれた後、健太さんは神獣に乗って飛び立った。
手を振って背中を見送る。
「あ、健太さんの血を吸うの忘れちゃった。」
どんな味なんだろう。
健太さんは、人間…ではないのかな?
今思うと、謎が多い王子だったのかも。
「また会いたいな。」
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作者名:If | 作成日時:2022年8月7日 8時